任侠☆バイオレンスラブ

第7章 想いのすれ違い


小春と別れ、樹さんの運転する車に乗り込む。



2人きりの車内にゆったりとした時間が過ぎて行く。



私の中では、さっきの浜松組の若頭が言った言葉が引っかかっていた。



「芽依。お前・・・本当にアイツに何もされてないんだな?」



「はい」



車に乗ってから何度目かの確認が入る。



何もされてない・・・けど・・・。



「でも・・・」



「なにかされたか!?」



引っかかっていたことを言おうとした瞬間、運転中にも関わらず私の方を向く樹さん。



まぁ、それは一瞬だけだったんだけど・・・。



「変な事言われました」



「・・・・・・変な事?」



「樹さんが私に心酔してるって・・・」



「っ!?」



正直に言われたことを伝えると、少し動揺したようにビクッと反応した樹さん。



予想外の事を言われてびっくりしたのかな。



なんて考えていると、徐々に気分が落ちていく。



「そんなことないのに、絶対そうだっていうんですよ。変ですよね?」



「・・・別に変ではねぇだろ。俺だって、大事に想ってる奴には心酔するさ」



「えっ・・・!?」



い、今・・・樹さんなんて言った・・・?



大事にしてる奴には心酔する・・・?



大事な人いるって言ってたけど・・・それって・・・私?



「な、なんで・・・?」



「だから──・・・この先は言わせんな」



樹さんの方を見ると顔を赤らめながらしどろもどろに言葉を紡いでいた。



そんなの・・・私のことが好きだって言ってるようなものじゃん・・・!!



「・・・あの、樹さん。・・・好きです」



「っ・・・!?」



心の中で愛おしさが爆発してしまった私は、思っていたことを口に出してしまう。



その瞬間、車が左右に揺れた。



「・・・ありがとな、嬉しい」



運転しながらも、樹さんはとても優しい声で返事を返す。



だけど、樹さんの返事はそれだけではなかった。



「・・・だけどな、俺はお前と付き合うことは出来ない」



「・・・え?」



樹さんの言ったことが、理解できなかった。



いや、理解したくなかった。



これは・・・振られてると、わかりたくないから。



「大事だからこそ、ダメだ」



「・・・そう・・・ですか・・・」



突きつけられたダメだという言葉──私には衝撃が強かった。



その後、どうやって兵頭組に帰ったのか、覚えていない。



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