任侠☆バイオレンスラブ
兵頭 樹side



あの日、芽依が浜松組の若頭にさらわれた。



正直、それを聞かされた時は生きた心地がしなかった。



桜田組の連中が協力してくれて芽依に危害が加わる前に救出できたが、俺は怖い。



今回は、俺が原因で芽依が狙われたようなものだ。



大事な奴が俺のせいで危険な目に遭う・・・それだけは、避けたかった。



だから、芽依の告白された時は困り果てた。



俺だって芽依が好きだ──あの時、助けられた時から。



だけど、俺が近くにいるせいで芽依が危険な目にあうのだけは、絶対に嫌だ。



だから・・・告白された日から、俺は芽依への気持ちをしまうべく兵頭組から離れることにした。



親父に事情を話し、承諾をもらう。



あとは──圭介と新一に芽依のことを託してこの場を去るだけだ。



深夜遅くに、荷物をまとめて部屋を出る。



隣の部屋の前まで行き、扉をかすかに開けるとすぅ・・・すぅ・・・とリズム良く聞こえる芽依の寝息。



遠くから芽依の寝顔を見つめたあと、覚悟を決めて部屋から立ち去る。



兵頭組の若頭である以上、ゴタゴタに巻き込む可能性はいくらでもある。



大事だから、遠ざけたいんだ。



廊下を歩いて行くと、圭介と新一が目の前から歩いてくるのがわかった。



「おい、圭介。新一」



「あれ?樹、どうしたの?その荷物・・・」



「俺はここを離れる。芽依のこと、頼むぞ」



「え、ちょっと待てって・・・!どういうことだよ・・・!」



圭介が何か言いたげだったが、そのまま兵頭組の屋敷を出る。



これでいい。



これでいいはずなんだ。



芽依に迷惑をかけるわけにはいかない。



俺のこの恋心を完全にしまい込めば・・・全部解決だ。



芽依は、安全なところで、安全なやつと幸せになってくれればいい。



幸せになってくれさえすれば・・・それでいい。



それでいいんだ。



そう思い込むことにして、湧いてくる独占欲をしまい込む。



この気持ちを持ったら、芽依を危険に巻き込んでしまう。



離れている間に、完全にしまい込まねぇと。

< 46 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop