任侠☆バイオレンスラブ
伊瀬 新一side



樹さんが出ていってから、2週間が経った。



「新一くん、樹さんは?」



「んーん、まだ帰ってきてないみたい」



「・・・そっか」



朝起きる度に芽依ちゃんは樹さんが帰ってきてるかどうかを確認していた。



そして、帰ってきてないと知ると日に日に落ち込む度合いが増えていっている。



学校の様子はわからないけど・・・バイト中も屋敷の中でも、芽依ちゃんは沈んでいた。



どこか上の空で、いつも憂いた表情をして・・・樹さんのことを想っているようだ。



・・・正直、そんな芽依ちゃんは見てられない。



そう思った俺は、スマホを取り出してとある連絡先に電話をかける。



『・・・なんだ』



呼び出し音の後に聞こえてくる、冷静な声──樹さんだ。



「樹さん?今どこですか?」



『どこでもいいだろ』



あぁ・・・そう言うと思った。



想像していた通りの言葉に、俺はため息をついた。



「芽依ちゃん、樹さんがいなくて寂しがってますよ。いい加減、帰ってきたらどうです?」



『・・・・・・まだダメだ。こんな状態じゃ帰れねぇ』



こんな状態じゃ・・・?どんな状態だよ。



樹さんの言葉にハテナを浮かべながらも、その言葉に怒りが湧いてきた。



「・・・あの。帰れないのは仕方ないとして、芽依ちゃんに一言何か連絡してあげてください。見てるこっちがしんどいんですけど」



『・・・無理だ』



「そんなこと言ってると──俺、芽依ちゃんのこと奪いますよ?」



『っ・・・!! 』



俺の言葉で何かを言おうとしてやめる樹さん。



いつもなら、こんなこと言おうもんならキレそうなものなのに・・・。



『・・・芽依が望むなら・・・それでいい』



「はぁ!?そんなこと望むわけないでしょ!?芽依ちゃんは他でもないアンタが好きなんですよ!?」



『・・・知ってる』



「じゃあなんでっ・・・!!なんで・・・そばを離れて悲しませてんすか・・・!!傍にいろよ!!」



芽依ちゃんの気持ちを知ってるくせに、離れようとする樹さんに対してやるせない気持ちになる。



両想いなのに・・・なんで・・・!?



『・・・大事だから、遠ざけてぇんだ』



「・・・は?」



『俺は・・・兵頭組の若頭だ。どうしたって、芽依を危険に巻き込んじまう。好きだから、遠ざけたいんだ』



樹さんは冷静に、それでいてつらそうに言葉を吐き出す。



樹さん・・・本当に不器用な人だな。



「・・・だからって、芽依ちゃんを悲しませていい理由にはなりませんよ。早く帰ってきてください」



『・・・善処はする』



その言葉を残し、ブツっと電話が切れる。



樹さん・・・もしかして、ここ出ていったのって芽依ちゃんへの気持ちを無くすためだったりするのかな。



だとしたら、的外れなことしてるって。



大事なら傍で守るぐらいしろよ。



「ったく・・・ほんとにどうしようもねぇ奴らだよ・・・」


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