任侠☆バイオレンスラブ
第8章 幸せの形
樹さんと結ばれてから、1ヶ月──
今日は樹さんの20歳の誕生日だ。
兵頭組全員でお祝いの宴を催しをしている。
パーティーが始まってある程度時間が経ったんだけど・・・。
酔ってしまった樹さんが私を後ろから抱きしめている状態になっていた。
「あの・・・樹さん?」
「芽依〜、芽依〜・・・!!」
私の肩に顔を埋めてぐりぐりとすりつけてくる樹さん。
体に回された腕はちょっとやそっとじゃ離れそうにないぐらい力強い。
「アッハハハハッ!!樹の奴酒弱ぇなぁ!!」
樹さんがベロベロな様子を見てゲラゲラと笑っている圭介さん。
そう言う圭介さんも結構酔っていそうだ。
「だからあまり酒をつぐなと言っただろう。俺に似て酒強くねぇんだから」
「飲むって言ったの樹の方っすよ」
「だからといって、お嬢さんに迷惑がかかるだろう」
圭介さんに注意をする組長さんは樹さんに抱きつかれている私を見つめる。
私、別に迷惑じゃないんだけどね。
むしろ可愛いし。
「あ、いえ。私は迷惑ではないので大丈夫ですよ。珍しい樹さん見れて嬉しいので」
「芽依、なに俺以外と話してんだよ。俺と喋れよ〜・・・俺に笑いかけろよ〜・・・!」
笑いながら組長さんと話すと、樹さんは肩にあごをのせながらゆさゆさと私の体を揺さぶる。
樹さんの方をみると、顔を真っ赤にしながらムスッとしていた。
いつもなら無言で相手を睨みつけるだけなのにこうして口に出して言うってことはだいぶ酔ってるよね?
「樹さん、お水飲んでください。さすがに酔すぎですよ」
「やだ」
「やだじゃない。ほら、離れて水飲んで」
「いやだ。芽依の傍にいる」
さっきまでとは比べ物にならないぐらい強い力で私の事を抱きしめてくる樹さん。
水を飲もうとしない樹さんに思わず笑ってしまう。
いつも抱きついたらなかなか離れようとしない感じだったけど、今日はさらに酷いな。
「あーぁ、いつにも増してベッタベタだな。芽依、嫌なら部屋に戻ってもいいぞ?」
「いえ、大丈夫です。酔った樹さん、可愛いので」
圭介さんの提案に笑いながら断る。
こんな珍しい樹さん見れるのもお酒入った時ぐらいだし・・・それに可愛いし。
「あの樹さんを可愛いって言える芽依ちゃんが怖いよ」
「そう?」
ジュースを飲んでいた新一くんが、机に頬杖をつきながら呆れたように口にする。
樹さん、可愛いじゃん。
「めーいー!!俺と喋れよー!!」
色んな人と話していると、樹さんが私の肩にぐりぐりと顔をすりつけてくる。
ほら、こんなに可愛い。
「何喋るんですか?」
「んー・・・いっぱい」
「ふふっ、いっぱい喋りましょうか」
思わず笑いながら、樹さんと会話をする。
だけど、酔っていて話題が出ないのか樹さんからは話題は出てこない。
「うん。芽依といっぱい喋りたい。好きだから。芽依は俺の事好き?」
「好きですよ」
いつもサラッと言うけど、いつも以上に饒舌に言葉を発する樹さん。
そんな所も可愛いな。
「うっわ、甘いわー・・・砂糖吐きそう」
「そうっすね。だけど──幸せそうでなによりっすよ」
「そうだな」
そんな会話をしているとは知らずに、樹さんと笑いながら夜が更けるまで談笑していた。