任侠☆バイオレンスラブ
樹さんと結ばれてから数年──結婚をして子供が産まれた。
名前は──伊夜。
もうすぐ1歳になる。
「あー、まーまー」
「!!樹さん、伊夜が“ママ”って言いましたよ」
「そうか。パパが先だと思ってたんだけどな」
近くでくつろいでいた樹さんに伊夜がママと言ったことを伝えると、少し残念そうにしている樹さん。
芽依より先に呼ばれたい!って前に話してたもんね。
「惜しいところまでは言ってたんですけどね 」
「伊夜、パパって言ってみろ。ほら、パーパ」
「ぱぁ?」
私が抱っこしている伊夜に向かってかがみながら声をかける。
伊夜が樹さんの方を向いて樹さんの言葉を真似し始める。
もう少しで言えそうね。
「パーパ」
「ぱ・・・ぱーぱー」
「!!め、芽依!!今!!パパって!!」
「ふふっ、言いましたね」
伊夜の言葉を聞いてキラキラとした表情で私の方を向く樹さん。
最近表情豊かになったな・・・それも、伊夜のおかげかな?
「伊夜〜、パパだぞ〜!!」
「樹さん、抱っこしますか?」
「する」
私が樹さんに伊夜の抱っこをするか聞くと、これでもかというぐらい即答してくる。
それを聞いて、思わず笑ってしまった。
「ふふっ・・・はい、おねがいしますね」
「伊夜ー・・・よーしよし」
グズる事もなく、樹さんの腕の中にいる伊夜を見て、愛おしくなってくる。
「可愛いですね」
「あぁ。芽依の子だ。可愛くて当たり前だろう」
「そうですか?樹さんに似てると思いますよ?」
「そうか?」
私の言葉に、伊夜のことを見つめる樹さん。
その視線に、キャッキャと嬉しそうに笑う伊夜。
「笑ったところとか樹さんにそっくりです」
「そうか。顔立ちは芽依そっくりだけどな」
「ふふっ、そうですね」
お互いの顔を見つめあって微笑む。
お互いがお互いに似てると思ってたみたいだ。
2人の子供だから当たり前なんだけどね。
「・・・なぁ、芽依」
「なんですか?」
「今、幸せか?」
いつになく真剣な表情を浮かべている樹さん。
幸せか・・・か。
そんな決まりきってること聞いてくるなんて・・・。
「なにバカなこと聞いてるんですか。・・・幸せに決まってますよ」
「・・・そうか。ならいい」
優しい笑みを浮かべながら私を見つめる樹さんに微笑み返す。
こんな生活、幸せすぎるぐらいだ。
「樹さん、愛してます」
「あぁ。俺もだ」
素直に言葉を紡ぎ、伊夜を抱きかかえている樹さんの胸へと飛び込む。
それを難なく受け止め、お互いに笑いあった。
【END】