任侠☆バイオレンスラブ

混乱している私を見て、呆れたようにため息をつく威厳のある人。



「・・・説明してないのか、樹」



「混乱させると思ったんで」



「充分混乱させてるだろうが」



部屋のすみに控えていた樹さんに対し、ため息をつく。



そして、私に向き直った。



「不躾にすまんかった、説明をしよう。俺達は兵頭組、組長の兵頭 秋照(ひょうどう あきてる)だ。で、君が先日助けてくれたそいつは、兵頭組の若頭──兵頭 樹(ひょうどう いつき)だ」



改まったように自己紹介をし始める組長さん。



だけど、私はここが兵頭組であることが驚きだった。



ここが兵頭組だとしたら、なんで急に連れてこられたんだ・・・?



「そこにいる樹を助けてくれた時にな、敵対している浜松組にお嬢さんのことを見られてしまってな。そのせいで浜松組に狙われてしまってるんだ」



「狙われてる・・・」



その言葉を聞いて、思い当たる節があった。



樹さんを助けた次の日から視線を感じるようになった。



もしかして、その視線って・・・浜松組が私を狙ってたから・・・?



その事実に気付いてしまい、すごく怖くなっきた。



「そこで、だ。君のことを浜松組から匿うために俺達の家に住まないか?」



「・・・え?」



「元々、こうなってしまったのはうちの若頭である樹を助けたことが原因だ。俺達兵頭組に責任がある。・・・君を、守らせてくれ」



足の上で手をにぎり締めながら私のことを見つめてくる組長さん。



その真剣な表情に目を奪われた。



そんなこと言われたら、頷くしかないじゃん・・・。



「・・・はい、お願いします」



「あぁ、任せてくれ。お嬢さんには傷1つ付けさせないと誓うよ」



頷くしかなくなってしまった私に対し、優しい笑みを浮かべる組長さん。



わ・・・優しい顔・・・。



「親父、こいつの世話は俺がする」



「あぁ、任せる。あと、新一と圭介も警護に当てろ。そいつらには俺が直接話す」



「わかった」



私を置き去りにして話がどんどん進んでいく。



私の知ってる伊瀬さんの名前が出たけど・・・多分違うよね。



“しんいち”って名前の人、結構いるし。



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