エーデルワイスの月海さんに気をつけて
出会いは最悪の味
 春は桜。桜といえばお花見。


 「今から会いたいなんて、お花見デートのお誘いかな? 何着ていこうかな」


  ふわふわした夢心地。付き合い始めた恋人からの“会いたい” という甘い言葉は、絶対デートのお誘いに決まっている。


 学園が発行する冊子にも書かれていた、デートスポットで有名な空中庭園に向かう。エレベーター乗ればすぐだ。


 学園自慢の空中庭園は薬用植物から、毒草まで多岐に渡る。大半の生徒はそこには興味ないらしく併設されたおしゃれなカフェと“デートスポット”にしか興味がない(当たり前でしょう)。



「井ノ原くんお待たせ! 次のお花見デートのことでしょ? 私ねSNSでも人気な桜通り行きたいなあ」


 エレベーターの扉が開いた瞬間からお花畑全開の私に、彼は心底どうでも良さそうに手短に告げた。



「茉白別れて。彼女できた。可愛いと思ったの幻だったかもな」


 もう一つあるエレベーターに淡々と乗り込み去っていく。



…………んん? 私、今着いたばかりだよ?



“会いたい”ってデートの約束なんかじゃなくて、別れ話!?



 まだ付き合って数日しか経ってないのに?


 嘘でしょ…………井ノ原くん。顔がめちゃくちゃタイプだったのに…………。




 こうして私の恋は、桜が咲く季節と共に散っていった。


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