義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
18.公爵の部下side
その日、宰相の執務室で部屋の主の絶叫が響いた。
「な、なんだこれは~~~!!?」
事の始まりは宰相の息子であるミゲル様の家庭教師フォード氏の逮捕によるものだ。宰相としては御子息のために最高の家庭教師を選んだつもりだったらしいが、その実態は、暴力教師と言っても過言ではない。
もっとも騙されたのは宰相だけではなく数多くの貴族が騙されていた。それはもう、あっちでもこっちでも。そして被害者が遂に訴えた。宰相は一面トップを飾った新聞の見出しにわなわなと震えている。
「それが世間で“極めて優秀だと評判だった家庭教師達”の本性が露見した記事です」
「こ、これが真実だというのか?」
「依頼先の貴族が訴えを起こしたのは事実です。何でもフォード氏を始めとする彼一派の教師達は過去に何度も教え子にトラウマレベルの教育を施していたようです。今の今まで死人が出なかったのは奇跡と言えるでしょう」
依頼主の後継者である子息の教育を任されていながら過剰すぎる体罰。あれはもはや暴力行為だ。訴えられた家庭教師達は己の非を一切認めていない。
『教育課程必要な処置を施しただけだ』
貴族の跡取りに対して、教育と称して鞭打ちする必要が何処にある?魔力コントロールの訓練で大怪我を負わせても回復魔法で傷一つ残らないから問題ないとでも思っているのか?回復魔法では心の傷は癒せない。そんな事も分からない者達が教師だとは嘆かわしい限りだ。
「フォード氏一派のスパルタ式教育は有名でした。依頼先も不思議に思わなかったのでしょう。苛烈な教育は主に下位貴族のみ。高位貴族の子弟に至っては厳しい教育の範囲内に収められていましたので余計に露見しなかったのでしょうね」
「……まさかこんな事になるとは。私はただ彼らに良かれと思って行動していただけなのに……」
宰相の顔色は悪い。それはそうだろう。フォード氏一派の紹介は宰相も一役買っている。最初に声を上げた子爵家は代々優秀な魔術師を輩出してきた家。現当主は国一番の宮廷魔術師と言われている。しかし残念なことに、その御子息は魔術師としての才能があまりないときた。ただの噂かと思えば事実だというのだからどうしようもない。
陰で「落ちこぼれ」と囁かれているほどだった。
だからこそ実績もあり、ミゲル様の家庭教師をなさったフォード氏の一派を紹介したのだろう。宰相閣下に打算がなかったと言えば嘘になる。宮廷魔術師と懇意にという思惑もあったはずだ。ミゲル様と同年代の息子というのもあり、将来を見越しての縁づくりをなさった結果がこうも裏目に出ようとは思いもしなかった。運が悪いというか、なんと言うべきか。
「この度の件はさすがに見過ごす事は出来ません」
「分かっている。その前にフォードとその子飼連中を洗い直せ!徹底的に奴らの背景を調べるのだ!」
「すでに手配済みです」
私の返答を聞いた瞬間、宰相が目を丸くし固まる。その顔のまま私を見てくるものだから、一体何だろうかと見返せば慌てたように口を開いた。
「随分手際が良いではないか?」
「お褒め頂き光栄です。それで、どうされますか?」
「もちろん相応の対応をとる!!」
こめかみに青筋を立てて激怒する姿を見るまでもない。ここまで事態が悪化すれば公爵家の面子は丸潰れだし、貴族達の信頼を失う事にも繋がるだろう。そうなれば派閥の力関係も大きく変化するに違いない。ただでさえ厄介な方がいらっしゃるのだ。
宰相閣下としてもここが正念場だ。
「な、なんだこれは~~~!!?」
事の始まりは宰相の息子であるミゲル様の家庭教師フォード氏の逮捕によるものだ。宰相としては御子息のために最高の家庭教師を選んだつもりだったらしいが、その実態は、暴力教師と言っても過言ではない。
もっとも騙されたのは宰相だけではなく数多くの貴族が騙されていた。それはもう、あっちでもこっちでも。そして被害者が遂に訴えた。宰相は一面トップを飾った新聞の見出しにわなわなと震えている。
「それが世間で“極めて優秀だと評判だった家庭教師達”の本性が露見した記事です」
「こ、これが真実だというのか?」
「依頼先の貴族が訴えを起こしたのは事実です。何でもフォード氏を始めとする彼一派の教師達は過去に何度も教え子にトラウマレベルの教育を施していたようです。今の今まで死人が出なかったのは奇跡と言えるでしょう」
依頼主の後継者である子息の教育を任されていながら過剰すぎる体罰。あれはもはや暴力行為だ。訴えられた家庭教師達は己の非を一切認めていない。
『教育課程必要な処置を施しただけだ』
貴族の跡取りに対して、教育と称して鞭打ちする必要が何処にある?魔力コントロールの訓練で大怪我を負わせても回復魔法で傷一つ残らないから問題ないとでも思っているのか?回復魔法では心の傷は癒せない。そんな事も分からない者達が教師だとは嘆かわしい限りだ。
「フォード氏一派のスパルタ式教育は有名でした。依頼先も不思議に思わなかったのでしょう。苛烈な教育は主に下位貴族のみ。高位貴族の子弟に至っては厳しい教育の範囲内に収められていましたので余計に露見しなかったのでしょうね」
「……まさかこんな事になるとは。私はただ彼らに良かれと思って行動していただけなのに……」
宰相の顔色は悪い。それはそうだろう。フォード氏一派の紹介は宰相も一役買っている。最初に声を上げた子爵家は代々優秀な魔術師を輩出してきた家。現当主は国一番の宮廷魔術師と言われている。しかし残念なことに、その御子息は魔術師としての才能があまりないときた。ただの噂かと思えば事実だというのだからどうしようもない。
陰で「落ちこぼれ」と囁かれているほどだった。
だからこそ実績もあり、ミゲル様の家庭教師をなさったフォード氏の一派を紹介したのだろう。宰相閣下に打算がなかったと言えば嘘になる。宮廷魔術師と懇意にという思惑もあったはずだ。ミゲル様と同年代の息子というのもあり、将来を見越しての縁づくりをなさった結果がこうも裏目に出ようとは思いもしなかった。運が悪いというか、なんと言うべきか。
「この度の件はさすがに見過ごす事は出来ません」
「分かっている。その前にフォードとその子飼連中を洗い直せ!徹底的に奴らの背景を調べるのだ!」
「すでに手配済みです」
私の返答を聞いた瞬間、宰相が目を丸くし固まる。その顔のまま私を見てくるものだから、一体何だろうかと見返せば慌てたように口を開いた。
「随分手際が良いではないか?」
「お褒め頂き光栄です。それで、どうされますか?」
「もちろん相応の対応をとる!!」
こめかみに青筋を立てて激怒する姿を見るまでもない。ここまで事態が悪化すれば公爵家の面子は丸潰れだし、貴族達の信頼を失う事にも繋がるだろう。そうなれば派閥の力関係も大きく変化するに違いない。ただでさえ厄介な方がいらっしゃるのだ。
宰相閣下としてもここが正念場だ。