いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 校外合宿の次の日は土曜日。

 ゆっくり休めるかと思いきや、校外合宿の作文を書かなくちゃいけなくて。

 わたしは自分の部屋で原稿用紙とにらめっこをしていた。

 一番印象に残っているのは……やっぱり、早月くんが女の子に告白されたこと。

 けど、そんなこと書けるわけがない!

 わたしは、カレー作りの話を中心に書くことにした。

 何とか仕上がった頃、扉がノックされた。



「はぁい?」

「早月やけど。入っていい?」

「いいよ」



 早月くんは、原稿用紙を持ってきていた。



「なぁ美奈ちゃん、作文書けてんけど、変なとこないかどうか読んでみてくれへん?」

「うん、わかった」

「俺は美奈ちゃんの読もうかな。できたん?」

「できたよ。じゃあ、交換ね」



 わたしはこの時、初めて早月くんの字を見た。

 お手本みたいに綺麗な字だ……!



「早月くん、字が上手だね!」

「そうかぁ? まあ習字はやっとったからな」



 内容も、山登りの厳しさと達成感のことについて書かれていて、とても読みやすかった。



「早月くん、文書も上手!」

「美奈ちゃんのも良かったで。俺、料理はさっぱりやったからなぁ」



 わたしはここで、気になっていたことを聞いてみた。



「学校では喋り方変えてるの……?」

「せやで。恥ずかしいもん。関西出身やてバレたら、面白いこと言うて、とかなりそうやし」

「あはは……それは困るね」



 今度はわたしが質問される番だった。



「美奈ちゃんは部活入ったんやっけ?」

「部活じゃなくて生徒会。真凛に誘われて」

「ああ、あの写真撮ってくれた子やな」

「早月くんは入った?」



 すると、早月くんは少し目を伏せた。



「いや……俺はええかな。本読むだけで楽しいし」

「そっかぁ……」



 背が高いし、バスケ部やバレー部に入れば活躍できそうなのにな。

 でも、それは余計なお世話だと思って言わなかった。



「ありがとう美奈ちゃん。読んでもらって自信ついたし、このまま提出するわ」

「わたしこそ、ありがとう」



 そして、早月くんはわたしの部屋を出て行った。

 早月くんがこの家にきてもうすぐ一ヶ月。

 まだまだ知らないことがたくさんある。

 わかったのは、この家の中だと早月くんはリラックスしてくれているということ。

 これからも、早月くんが過ごしやすいように、わたしも頑張らなくっちゃ。
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