いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

14

 学校では、ただの生徒会の仲間。

 家では、いとこ。

 そんな関係を、きっちり使い分けられるように、気を付けて過ごしていたある日。

 夕飯の時に、お父さんが言った。



「もうすぐ早月くん誕生日だね。みんなでご飯食べに行こうか」

「いいんですか、叔父さん! 嬉しいです!」



 わたしは早月くんに尋ねた。



「えっと、誕生日って何日?」

「五月二十五日。五月生まれやから早月やねんて。単純やんなぁ」



 すると、お母さんが笑って言った。



「お義姉さんが、月の名前からつけたって言うから、うちもそうしようってなって、美奈になったんだよ?」

「そうだったの?」

「うん。六月三十日、水無月」

「その話、初めて聞いたんだけど!」



 名前の由来はともかく、焦ったのは、早月くんの誕生日まであと一週間しかないということだ。

 一緒に食事に行くことで、お祝いにはなるけれど……。

 せっかくだから、何かプレゼントしたい。

 でも、何がいいんだろう?

 こういう時、いつも真凛に聞いていたけど、いとこ同士だってバレるわけにはいかないし、今回は自分一人で考えないと。

 わたしは生徒会のない放課後、こっそりショッピングモールへ行った。

 お小遣いの範囲だと、買えるものは限られている。

 それに、わたしと早月くんはただのいとこ。

 彼氏彼女じゃないんだから、気持ちが乗っているように見える物は避けたい。

 いくつかある雑貨屋さんを、うろうろ、うろうろ……。

 あれでもない、これでもない、と探しながら、早月くんの好きなことを思い浮かべた。



「あっ……」



 本だ。本棚にぎっしり詰まった文庫本。

 読書好きな早月くんには、本にまつわる物がいいんじゃないかな?

 わたしは本屋さんに行ってみた。ずらりと並んだブックカバー。この中から、ぴったりの物を見つけよう!

 いくつか見比べてみて、わたしが決めたのは、水色に白のストライプが入った爽やかな物だった。

 値段も手ごろだし、これなら受け取ってくれそう。

 プレゼント用の巾着袋に入れてもらった。

 袋を留めるところには、小さなカードがついていて、メッセージを書き込めるようになっていた。

 別に、何も書かずに渡してもいいんだけど……せっかくだし。



「これからもよろしくね」



 そう書いた。

 変、じゃないよね? 大丈夫だよね?

 男の子にプレゼントなんて初めてだから、ドキドキが止まらない。
< 14 / 40 >

この作品をシェア

pagetop