いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 早月くんの誕生日当日。

 お父さんが運転する車に乗って、ホテルに行った。

 レストランのビュッフェが美味しいんだ。

 いつもは欲張って、お皿にたくさん盛り付けちゃうけど。

 今日は早月くんのお祝いの場だから、控えめにしておいた。

 デザートを食べ終わって、そろそろいいかなって思ったから。

 わたしはプレゼントを差し出した。



「これ……趣味じゃなかったらごめんね?」



 土壇場になって、自信がなくなってしまって、そんな言い方になってしまった。



「えっ、俺に?」

「うん……」

「今すぐ開けてもええん?」

「いいよ……」



 まず、早月くんはメッセージカードを見た。

 口元、ゆるんでる。

 そして、巾着袋を開けた。



「わっ、ブックカバー? めっちゃ嬉しい! 俺、毎日使うわぁ!」

「無理しなくていいんだよ、無理しなくて」

「ほんまに嬉しいねんて。大事にするなぁ」



 帰りの車の中で、早月くんは言った。



「叔父さん、叔母さん、それに美奈ちゃん。いつもお世話になってるのに……お祝いまでしてもろて。ありがとうございます」



 お父さんが言った。



「いいんだよ。早月くんのことは、本当の息子みたいに思っているんだから」



 そして、お母さんがこんなことを聞いた。



「寂しくない? お義兄さんとお義姉さん、年末まで帰ってこられないんでしょう?」

「たまに電話してるんで、大丈夫です。生徒会では美奈ちゃんと一緒やし、毎日楽しいですよ」



 家に帰って、お風呂に入って。

 冷たいものが飲みたくなったから、キッチンに行って麦茶をコップに注いだ。

 すると、早月くんもキッチンにやってきたんだけど……。



「きゃっ!」



 上半身、裸なんですけど!



「早月くん! 服! 服!」

「えっ? 暑いからそのまま出てきてしもた。ごめんごめん」



 ちゃんとTシャツを着てくれたことを確認して、早月くんに向き直った。



「えっと、早月くんも喉渇いた?」

「そんなとこ」

「麦茶入れるね」



 もう……早月くんったら、うちに馴染んでくれたのはいいけど、気を抜きすぎだよ!



「美奈ちゃん、ブックカバー、ほんまに気に入ったわ。俺のこと考えて選んでくれたんやなって伝わってきて……感動した」

「大げさだよ。その、いつも本読んでるからっていう単純な理由で選んだだけだよ?」

「それが嬉しいんやて。美奈ちゃんの誕生日、きちんとお返しするで」

「適当でいいよ、適当で」



 わたしは麦茶を飲み干して、逃げるように自分の部屋に行った。

 まあ、今回のプレゼント作戦は成功した……のかな?
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