いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 早月くんの誕生日が終わって、体育祭が近づいてきた。

 生徒会でわたしに割り振られた仕事は、プログラム作り。

 パソコンを使うんだけど、生徒会長の西条先輩に直接教えてもらうことになった。



「美奈ちゃん、キーボード入力はできる?」



 早月くんが入って、鈴木という苗字が二人になったから、先輩たちからも美奈ちゃんと呼ばれるようになっていた。



「えっと、ゆっくりなら」

「こっちに入っているのが去年のデータね。これを今年用に書き換えるだけで大丈夫だよ」



 わたしが椅子に座って、西条先輩がその後ろに立って、一緒にマウスを動かしているんだけど……近い! 近いよ!

 操作を教えてもらうためだから、仕方ないかもしれないけれど、男の先輩とこんな距離で接するのなんて初めてだったから、鼓動が早くなってしまった。

 ガラッと扉が開いて、入ってきたのは早月くん。

 わたしたちを見るなり、ツカツカと寄ってきた。



「西条先輩。何してるんですか?」

「ああ、プログラム作りだよ。美奈ちゃんはパソコンに慣れてないから、教えてあげようと思って」

「パソコンなら俺、得意です。やりますよ」

「いや、美奈ちゃんがパソコンを覚えるのにいい機会だよ」

「それなら俺が教えます。西条先輩は他の仕事もあるでしょう?」

「まあ……そうだね」



 それから、早月くんがパソコンを教えてくれたんだけど……わたしにはわかった。何か、いつもと違う。

 何が違うのか、上手く言えないけど、早月くんは何かが違ったんだ。



「これで、文字の大きさが変えられるんだ。覚えた?」

「うん、大丈夫だよ」

「よくできました」



 違和感を抱えたまま、作業は終わって。先に早月くんが帰って。

 夕飯の時は、いつも通りだったから、気のせいかな、って思っていたんだけど。

 お風呂に入って、ベッドに寝転がっていたら、扉がノックされた。



「入っていい?」



 早月くんだ。



「うん、いいよ」


 わたしはベッドのふちに腰かけた。

 入ってきた早月くんは、唇を結んで、何だか難しそうな顔をしていた。



「どうしたの?」

「うん……あのさ。美奈ちゃんは、もっと自分のこと、自覚持った方がええと思うねん」

「へっ? 何の話?」

「隙だらけやねん。見てて危なっかしいわ。生徒会におる時は、俺が見張るから」

「えっ……ええっ?」



 何が何だかよくわからないまま、早月くんは出て行ってしまった。

 わたし、悪いことしたのかな……?
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