いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

18

 体育祭が終わって、すぐに家に帰った。

 日焼け止めは塗っていたけど、焼けちゃったかな? けっこうぐったりだ。
 
 着替えてリビングのソファに座って、ぼおっと早月くんを待っていた。



「ただいま」



 早月くんは、わたしを見ると、にかっと歯を見せて笑った。



「美奈ちゃん、リレー見ててくれたやんなぁ?」

「うん、見てた。凄かった。おめでとう、早月くん!」

「あの時なぁ……美奈ちゃんの姿が見えとったから。そこまで一直線や! って頑張ってん。褒めてもらえて嬉しい。美奈ちゃんに言われるんが一番嬉しい」

「もう、早月くん。大げさだなぁ」



 早月くんは、一旦自分の部屋に戻って着替えてきて、わたしの隣に座った。

 二人きりになるのは、ずいぶん慣れてきた。家族になってきたんだなぁ、って思う。



「美奈ちゃん、アレやね。体育祭終わってもたから、テストやね」

「わー、そうだった! うちの中学って、順位が貼り出されるんだよね。嫌だなぁ……」

「自信ないん?」

「全然。赤点取らないようにだけ頑張る……」



 その日の夕食。わたしはお父さんとお母さんに体育祭のことを話した。



「早月くんがアンカーでね。全員抜いて、一位になったんだよ! 本当に凄かった!」



 早月くんは照れたように笑っていた。

 お父さんが言った。



「やっぱり早月くんは運動神経がいいんだなぁ。てっきりサッカー部に入ると思ってたんだけどね」



 えっ、サッカー?

 驚いて何も言えないわたしをよそに、お父さんは話を進めていった。



「兄さんから聞いてたんだよ。小学生の時はサッカークラブに入ってたんだろう?」



 すると、早月くんはこう答えた。



「中学では勉強頑張りたいと思ったんで。大学行きたいですし」

「そうか、それならそっちを頑張るといいよ」



 なんだか、モヤモヤする。

 この気持ちのままいられなくなったわたしは、寝る前に早月くんの部屋の扉をノックした。



「美奈だけど……入っていい?」

「ええよー」



 早月くんは勉強机に座って本を読んでいたけど、わたしが入るとベッドに移動した。

 わたしはその隣に座った。



「ねえ、早月くん。サッカーのこと、詳しく聞いてもいい?」

「ああ、アレなぁ……」



 小学生の時。早月くんは、上級生をどんどん追い抜いてレギュラーになっていたらしい。

 それで、男子同士のやっかみがあって。

 疲れてしまったのだとか。



「サッカー自体は嫌いやないねんけどな。運動部の上下関係とか、友達関係とか、そんなんでややこしくなりたくなくてなぁ」

「そうだったんだ……」



 それだけ聞いて、自分の部屋に戻った。

 早月くんが、どの部活にも入らなかった理由はこれでわかったけど。

 謎がまた一つ生まれてしまった。

 だったらどうして、生徒会には入ったんだろう……?

 折を見て、聞いてみてもいいかもしれないと思った。
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