いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

02

 わたし、鈴木美奈(すずきみな)は、何の取り柄もない平凡な十二歳。

 勉強はそこそこ。運動もそこそこ。音楽や図工の成績もパッとしなかった。

 男の子のことは……ちょっと苦手。

 小学校では女の子としか遊ばなかった。

 そんなわたしが、いとことはいえ男の子と生活するだなんて。

 しかも、早月くんのこと、全然覚えてないし。

 早月くんが初めてうちにやって来た日、わたしは緊張でガチガチだった。



「鈴木早月です。よろしくお願いします」



 うちの玄関でぺこりと頭を下げた早月くん。

 わっ、背が高い。サラサラの黒髪に、くっきりした目鼻立ちは、童話に出てくる王子様みたい。

 わたしもおずおずと自己紹介をした。



「鈴木美奈です……よろしくお願いします……」



 そんな、ぎこちないわたしたちのやり取りをみて、お母さんが笑った。



「もう、あなたたちはいとこ同士なんだから、もっと気楽にしたらいいのに」



 そんなこと言われても、こんなにカッコいい男の子だったなんて思わなかったんだよー!



「……叔母さん。それもそうやね。美奈ちゃん、でええかな」



 わたしはパチパチとまばたきをした。

 関西弁?

 あっ、そうか、神戸に住んでいたんだっけ……?



「う、うん。いいよ、早月くん」

「引っ越し終わったら、ゆっくり話そう」




 それから、家族みんなで早月くんの引っ越しを手伝った。

 びっくりしたのは、本がとても多かったということ。

 お父さんはそのことを知っていたみたいで、早月くんの部屋には立派な本棚が運びこまれて、早月くんがそこに本を並べていった。

 夕飯はカレー。早月くんは私の隣に座ることになった。早月くんが言った。



「美奈ちゃん、覚えとう? 一緒に遊んだ日の夜はいっつもカレーやったな」

「えっと……そうだっけ。ごめん、忘れちゃった」

「そうかぁ」



 しゅん、と眉根を下げてしまった早月くん。

 わたし……悪いことしちゃったかも。

 けど、本当に覚えてないんだもん。話を合わせる方が失礼だし。

 それからは、お父さんとお母さんがよく喋るから、わたしは相槌を打っていただけだった。

 それで、食べ終わって、食器をシンクに持って行った後だった。

 早月くんに声をかけられた。



「なぁ、この後ちょっとだけ、俺の部屋で話さへん?」

「あっ、うん……いいよ」



 そう言ってしまってから、わたしは気付いてしまった。

 男の子と部屋で二人っきり、ってコト?
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