いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 花火大会当日。
 
 お昼過ぎに、浴衣を持って美容院に行って、着付けとヘアメイクをしてもらった。

 鏡の中のわたしは、ちょっとだけ……お姉さんっぽくなったかな?

 早月くんとは、駅前で待ち合わせをしていて、目印は時計台だ。

 ラフな白いTシャツにデニム姿の早月くんが、先にいた。



「お待たせ……」



 わたしが声をかけると、早月くんはぱちぱちと瞬きをした。



「えっ、嘘っ、美奈ちゃん? めっちゃ可愛い! 誰かと思ったぁ!」

「もう、早月くん大げさだよ」

「ほんまやねんて。わぁっ、今日はこんなに可愛い子と一緒に歩けるんや。嬉しいなぁ……」



 そして、早月くんはすっと手を差し出してきた。



「なぁに?」

「はぐれたらあかん。手ぇ繋いどこ」

「えっ、えっ、ええっ?」



 そのまま、手を握られてしまった。なんだか振りほどけないし、そのまま電車に乗っちゃった。

 電車の中は、花火大会に行くのだろう、浴衣の人たちがちらほらいた。

 見るからに仲のいい大学生くらいのカップルもいて。

 わたしたちも、その人たちと同じように見られてる? って思うと落ち着かなくて。

 早月くんが喋ることに、相槌を打つばかりだ。



「俺、ベビーカステラ食べたいなぁ」

「うん、いいね」

「他にもどんなんあるんか、回るん付き合ってな!」

「うん、いいよ」



 繋いだ手のひらから伝わる早月くんの体温。

 ほっこりして、落ち着くような、恥ずかしくて、そわそわするような。

 二つの気持ちが入り混じって、とんでもなく変な感じがする。

 まだ花火大会の会場に着いてもいないっていうのに、こんなので大丈夫なの?



「あっ、着いたで美奈ちゃん。足元気ぃつけな」



 そっと電車を降りて、階段を降りる人波の中に入って行く。

 手はずっと繋いだまま。

 けっこう大きなお祭りだから、知り合いにばったり出会うかもしれないし、人が多すぎて出会わないかもしれない。

 そんな、ギリギリの緊迫感。早月くんはそういうこと、考えてるのかな。

 駅を出て、少し歩いて、海辺の広場まで出た。

 早月くんがキラキラした瞳をわたしに向けて叫んだ。



「わぁっ、屋台だらけやー!」



 ふんわり香るのは、わたあめやソースの匂い。

 やってきたぞ……!
 
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