いとこの早月くんは関西弁で本音を言う
30
西条先輩と二人きり、という状況に、ちょっと遠慮はあったんだけど。
イルカショーが始まったとたんに、それが吹き飛んでしまった。
一斉に水面から飛び上がるイルカたち。派手な水しぶき。くるくる回って可愛いお辞儀。
わたしは前のめりになって、拳を握りしめた。
「西条先輩! 凄かったですね!」
「よかった、美奈ちゃんいい笑顔。他も回ろうか?」
「ぜひ!」
最初がイルカショーでよかった。一気にテンションが上がって、その後の展示も楽しく見ることができた。
途中、西条先輩がどうしてもおごってくれると言うのでソフトクリームを食べて。
薄暗いクラゲのコーナーでは、ついつい時間を忘れて見とれてしまった。
「美奈ちゃん、クラゲ好き?」
「はい。不思議な形してますよね。まるで宇宙から来たみたい」
「ははっ、そうだね」
全ての展示を見て回って、水族館を出た。
「美奈ちゃん、もう少し話したいんだけどさ。そこの公園、寄って行かない?」
「いいですよ」
木陰で涼しくなっているベンチに横並びで座った。
カナカナカナ……。
これは、ひぐらしかな。
しばらく暑さは続くだろうけど、夏休みはもうそろそろ終わってしまうんだ。
「ねえ、美奈ちゃん。実はさ。言いたいことがあって、今日誘ったんだ」
「……えっ?」
西条先輩のメガネの奥の瞳が、きらめいたように見えた。
「僕、美奈ちゃんのことが好きなんだ。生徒会室で、初めて出会った時からずっと。一目惚れした。他の誰とも付き合ってほしくないから……僕の彼女になってくれない?」
世界中の音が、一瞬止まったような気がした。
西条先輩が……わたしのことを、好き……?
こんな、平凡で、何の取り柄もないわたしのことを……?
誰かにそうやって、特別に想われていたこと自体は、嬉しい、のかもしれない。
けど、けど、わたしは……。
「……ごめんなさい」
そう言うので、精一杯だった。
次から次へと、涙がこぼれ出てきて。止まらない。
どうしてこんな気持ちになったのか。自分でたどり着くより前に、西条先輩に言われてしまった。
「そっか。やっぱり、早月くんのことが好きなんだ?」
わたしはこくん、と頷いた。
気付いてしまったんだ。
告白されて、初めて気付いた。
わたしは早月くんのことが好きなんだって。いとこじゃなくて、彼女になりたいんだって。
そう、気付いてしまった……。
「美奈ちゃん。色々考えたいことあるよね。僕のことはいいからさ。思いっきり泣くといいよ」
「さ、西条先輩は……どうしてそんなに優しいんですか……わたし、断ったのに……」
「先輩だから。後輩に優しくするのは当たり前でしょう?」
わたしは両手で顔を覆った。西条先輩は、わたしが泣き止むまで、ずっと背中をさすってくれていた。
イルカショーが始まったとたんに、それが吹き飛んでしまった。
一斉に水面から飛び上がるイルカたち。派手な水しぶき。くるくる回って可愛いお辞儀。
わたしは前のめりになって、拳を握りしめた。
「西条先輩! 凄かったですね!」
「よかった、美奈ちゃんいい笑顔。他も回ろうか?」
「ぜひ!」
最初がイルカショーでよかった。一気にテンションが上がって、その後の展示も楽しく見ることができた。
途中、西条先輩がどうしてもおごってくれると言うのでソフトクリームを食べて。
薄暗いクラゲのコーナーでは、ついつい時間を忘れて見とれてしまった。
「美奈ちゃん、クラゲ好き?」
「はい。不思議な形してますよね。まるで宇宙から来たみたい」
「ははっ、そうだね」
全ての展示を見て回って、水族館を出た。
「美奈ちゃん、もう少し話したいんだけどさ。そこの公園、寄って行かない?」
「いいですよ」
木陰で涼しくなっているベンチに横並びで座った。
カナカナカナ……。
これは、ひぐらしかな。
しばらく暑さは続くだろうけど、夏休みはもうそろそろ終わってしまうんだ。
「ねえ、美奈ちゃん。実はさ。言いたいことがあって、今日誘ったんだ」
「……えっ?」
西条先輩のメガネの奥の瞳が、きらめいたように見えた。
「僕、美奈ちゃんのことが好きなんだ。生徒会室で、初めて出会った時からずっと。一目惚れした。他の誰とも付き合ってほしくないから……僕の彼女になってくれない?」
世界中の音が、一瞬止まったような気がした。
西条先輩が……わたしのことを、好き……?
こんな、平凡で、何の取り柄もないわたしのことを……?
誰かにそうやって、特別に想われていたこと自体は、嬉しい、のかもしれない。
けど、けど、わたしは……。
「……ごめんなさい」
そう言うので、精一杯だった。
次から次へと、涙がこぼれ出てきて。止まらない。
どうしてこんな気持ちになったのか。自分でたどり着くより前に、西条先輩に言われてしまった。
「そっか。やっぱり、早月くんのことが好きなんだ?」
わたしはこくん、と頷いた。
気付いてしまったんだ。
告白されて、初めて気付いた。
わたしは早月くんのことが好きなんだって。いとこじゃなくて、彼女になりたいんだって。
そう、気付いてしまった……。
「美奈ちゃん。色々考えたいことあるよね。僕のことはいいからさ。思いっきり泣くといいよ」
「さ、西条先輩は……どうしてそんなに優しいんですか……わたし、断ったのに……」
「先輩だから。後輩に優しくするのは当たり前でしょう?」
わたしは両手で顔を覆った。西条先輩は、わたしが泣き止むまで、ずっと背中をさすってくれていた。