いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 西条先輩は、別れ際、こう言った。



「学校では、今まで通り、頼れる生徒会長やるからさ」



 ……だって。

 きっと、西条先輩も苦しいはず。なのに、そんな言葉をかけてくれるなんて。

 すぐに家に帰ったら、泣いたのが丸わかりだろうから、わたしは駅前を散策することにした。

 夏服のセール。特に買いたいものはないけど、ちょうどいいからそこで時間を潰した。

 帰宅すると、早月くんのスニーカーがなかったからホッとしてしまった。出かけているみたいだ。

 わたしは自分の部屋に入って、楽なTシャツとジャージに着替えた。

 それから、ベッドにうつ伏せになって、今回のことを考えていた。

 早月くんのことが、「恋愛」という意味で「好き」だってわかって。これからどうしたらいいんだろう。

 そのまま、ぼおっとして、眠ってしまった。泣き疲れていたせいもあったのかもしれない。

 お母さんに、肩を叩かれて起こされた。



「美奈、夕飯だよ、起きて。こんな時間までお昼寝しちゃって……」

「わっ……ごめんなさい」



 リビングに行くと、もうお父さんと早月くんは席についていた。

 今夜のメニューはそうめん。助かった。さっと食べ終わることができた。

 わたしは自分の食器をシンクに置いて、すぐに自分の部屋に戻った。

 すると、少しして扉がノックされた。



「なぁ、美奈ちゃん! 入れてー!」

「う、うん……」



 にっこり笑った早月くん。その笑顔が、今はとてもまぶしすぎる。



「真凛ちゃんと水族館、どうやった? 楽しかった?」

「まあ、普通……」

「どうしたん? もしかして真凛ちゃんとケンカしたん?」

「何でもない! 話したくないから出て行って!」

「ご、ごめんなぁ……」



 早月くんを追い払ってしまった。

 わたしったら、何やってるの……?

 その日から、わたしはなるべくリビングに行かないようにした。

 昼食も、早月くんも別々にとった。

 そうすることで、余計に心配をかけることはわかりきっていたけど、それでもそうしてしまった。

 わからない、わからないよ。

 こんな想いを抱えたまま、どうやって一緒に暮らしていけばいいの?

 そして、夏休みは終わってしまった。
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