いとこの早月くんは関西弁で本音を言う
32
二学期が始まった。
生徒会では、文化祭に向けてのスケジュールが説明された。
西条先輩は、あの時言ってくれた通り、「頼れる生徒会長」だった。
いつもの爽やかな雰囲気で、テキパキと役割分担を決めた。
わたしは江東先輩と一緒に、文化祭のパンフレット作りの班に入ることになった。
早月くんが、先に備品管理の班に手を挙げたから、それを避けたのだ。
やっぱり、というか何と言うか。
備品管理を女の子たちがこぞってやりたがって、最後はくじ引きになっていた。
終わって、真凛と一緒に帰ることになって、通学路で真凛がこんなことを話した。
「なんかさー、早月くん争奪戦が過激になりそうだよね? 美奈はいいの?」
「わたしは興味ないよ」
本当は、不安だった。文化祭がきっかけで、早月くんが誰かと親密になったらどうしようって。
けど、その時は、その時……なのかもしれない。
わたしは、ただのいとこなんだから。
夕飯の時以外は、なるべく自分の部屋にいるようになって、早月くんも来ることはなかった。
誕生日にもらったクッキーはとっくに食べてしまった。
缶は、空っぽのままだ。それを開けたり、閉めたり。
花火大会の時は、あんなに楽しかったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。
勉強もどんどん難しくなって、ちゃんと授業を聞かないといけないのに、どこか上の空だった。
そして、真凛と一緒に教室でお弁当を食べて、そのまま喋っていた時だった。
早月くんがわたしたちのところにやってきた。
「美奈ちゃん、生徒会のことで話があるんだけど、来てもらっていいかな?」
「あっ、うん……」
早月くんに連れて行かれたのは、中庭だった。
「早月くん、話って?」
「ああ、うん……生徒会っていうのは嘘。あのさ。どうしても気になってさ。最近、美奈ちゃんと距離感じるんやけど……」
とうとう、聞かれてしまった。わたしはうつむいた。とても早月くんの顔を見ることができなかった。
「俺、美奈ちゃんに何かした? したんやったら教えて。謝るから。あかんとこあったら直すから」
「そ、そういうのじゃないの……その……悩んでることがあって」
「悩み事?」
「今は、言えないんだ。心の整理ができなくて。だから、ごめん……」
すると、早月くんはポンポン、とわたしの頭を撫でた。
「そうかぁ。嫌われたと思ってたぁ。悩み事は気になるけど……俺に言えるようになったら教えて。それまで待つし」
ごめん、と言いかけたけど、飲み込んだ。
「ありがとう、早月くん」
きっと、これが今の正解だ。
教室に戻ると、真凛がニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
「美奈、何だったの? もしかして告白?」
「違うよ。本当に生徒会の話。作業が多いから手伝えるかどうか聞かれたけど、断ったの。それだけ」
そんな言い訳がスラスラ出てきてしまった自分に驚いた。
「なーんだ! やっとカップル成立かと思ったぁ」
「真凛、それよりさ、文化祭だけど……」
そうやって話題を変えた。わたし、上手く取りつくろえるようになってきたのかも。
生徒会では、文化祭に向けてのスケジュールが説明された。
西条先輩は、あの時言ってくれた通り、「頼れる生徒会長」だった。
いつもの爽やかな雰囲気で、テキパキと役割分担を決めた。
わたしは江東先輩と一緒に、文化祭のパンフレット作りの班に入ることになった。
早月くんが、先に備品管理の班に手を挙げたから、それを避けたのだ。
やっぱり、というか何と言うか。
備品管理を女の子たちがこぞってやりたがって、最後はくじ引きになっていた。
終わって、真凛と一緒に帰ることになって、通学路で真凛がこんなことを話した。
「なんかさー、早月くん争奪戦が過激になりそうだよね? 美奈はいいの?」
「わたしは興味ないよ」
本当は、不安だった。文化祭がきっかけで、早月くんが誰かと親密になったらどうしようって。
けど、その時は、その時……なのかもしれない。
わたしは、ただのいとこなんだから。
夕飯の時以外は、なるべく自分の部屋にいるようになって、早月くんも来ることはなかった。
誕生日にもらったクッキーはとっくに食べてしまった。
缶は、空っぽのままだ。それを開けたり、閉めたり。
花火大会の時は、あんなに楽しかったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。
勉強もどんどん難しくなって、ちゃんと授業を聞かないといけないのに、どこか上の空だった。
そして、真凛と一緒に教室でお弁当を食べて、そのまま喋っていた時だった。
早月くんがわたしたちのところにやってきた。
「美奈ちゃん、生徒会のことで話があるんだけど、来てもらっていいかな?」
「あっ、うん……」
早月くんに連れて行かれたのは、中庭だった。
「早月くん、話って?」
「ああ、うん……生徒会っていうのは嘘。あのさ。どうしても気になってさ。最近、美奈ちゃんと距離感じるんやけど……」
とうとう、聞かれてしまった。わたしはうつむいた。とても早月くんの顔を見ることができなかった。
「俺、美奈ちゃんに何かした? したんやったら教えて。謝るから。あかんとこあったら直すから」
「そ、そういうのじゃないの……その……悩んでることがあって」
「悩み事?」
「今は、言えないんだ。心の整理ができなくて。だから、ごめん……」
すると、早月くんはポンポン、とわたしの頭を撫でた。
「そうかぁ。嫌われたと思ってたぁ。悩み事は気になるけど……俺に言えるようになったら教えて。それまで待つし」
ごめん、と言いかけたけど、飲み込んだ。
「ありがとう、早月くん」
きっと、これが今の正解だ。
教室に戻ると、真凛がニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
「美奈、何だったの? もしかして告白?」
「違うよ。本当に生徒会の話。作業が多いから手伝えるかどうか聞かれたけど、断ったの。それだけ」
そんな言い訳がスラスラ出てきてしまった自分に驚いた。
「なーんだ! やっとカップル成立かと思ったぁ」
「真凛、それよりさ、文化祭だけど……」
そうやって話題を変えた。わたし、上手く取りつくろえるようになってきたのかも。