いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 二学期が始まった。

 生徒会では、文化祭に向けてのスケジュールが説明された。

 西条先輩は、あの時言ってくれた通り、「頼れる生徒会長」だった。

 いつもの爽やかな雰囲気で、テキパキと役割分担を決めた。

 わたしは江東先輩と一緒に、文化祭のパンフレット作りの班に入ることになった。

 早月くんが、先に備品管理の班に手を挙げたから、それを避けたのだ。

 やっぱり、というか何と言うか。

 備品管理を女の子たちがこぞってやりたがって、最後はくじ引きになっていた。

 終わって、真凛と一緒に帰ることになって、通学路で真凛がこんなことを話した。



「なんかさー、早月くん争奪戦が過激になりそうだよね? 美奈はいいの?」

「わたしは興味ないよ」



 本当は、不安だった。文化祭がきっかけで、早月くんが誰かと親密になったらどうしようって。

 けど、その時は、その時……なのかもしれない。

 わたしは、ただのいとこなんだから。

 夕飯の時以外は、なるべく自分の部屋にいるようになって、早月くんも来ることはなかった。

 誕生日にもらったクッキーはとっくに食べてしまった。

 缶は、空っぽのままだ。それを開けたり、閉めたり。

 花火大会の時は、あんなに楽しかったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。

 勉強もどんどん難しくなって、ちゃんと授業を聞かないといけないのに、どこか上の空だった。

 そして、真凛と一緒に教室でお弁当を食べて、そのまま喋っていた時だった。

 早月くんがわたしたちのところにやってきた。



「美奈ちゃん、生徒会のことで話があるんだけど、来てもらっていいかな?」

「あっ、うん……」



 早月くんに連れて行かれたのは、中庭だった。



「早月くん、話って?」

「ああ、うん……生徒会っていうのは嘘。あのさ。どうしても気になってさ。最近、美奈ちゃんと距離感じるんやけど……」



 とうとう、聞かれてしまった。わたしはうつむいた。とても早月くんの顔を見ることができなかった。



「俺、美奈ちゃんに何かした? したんやったら教えて。謝るから。あかんとこあったら直すから」

「そ、そういうのじゃないの……その……悩んでることがあって」

「悩み事?」

「今は、言えないんだ。心の整理ができなくて。だから、ごめん……」



 すると、早月くんはポンポン、とわたしの頭を撫でた。



「そうかぁ。嫌われたと思ってたぁ。悩み事は気になるけど……俺に言えるようになったら教えて。それまで待つし」



 ごめん、と言いかけたけど、飲み込んだ。



「ありがとう、早月くん」



 きっと、これが今の正解だ。

 教室に戻ると、真凛がニヤニヤ笑いながら聞いてきた。



「美奈、何だったの? もしかして告白?」

「違うよ。本当に生徒会の話。作業が多いから手伝えるかどうか聞かれたけど、断ったの。それだけ」



 そんな言い訳がスラスラ出てきてしまった自分に驚いた。



「なーんだ! やっとカップル成立かと思ったぁ」

「真凛、それよりさ、文化祭だけど……」



 そうやって話題を変えた。わたし、上手く取りつくろえるようになってきたのかも。
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