いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 文化祭のパンフレット作りは、想像以上に大変だった。

 全てのクラスの委員長から、クラスの出し物と、アピールポイントを書いてもらったプリントを提出してもらう。文化部の部長にも同じことをお願いする。それから、その内容をパソコンでキーボード入力する。

 あと、体育館で行われる演目のタイムテーブルも作成しないといけないけど、それは慣れている江東先輩がすることになった。

 わたしは作業をするために、毎日生徒会室に通った。

 あと、クラスの喫茶店は「喫茶フェリーチェ」と名前が決まって、衣装も準備してもらったんだけど……。



「わたし……こんなに可愛い服着てもいいの?」



 試着してきて、と渡されたのは、フリフリの白いエプロンがついた、黒い膝下丈のワンピース。

 真凛も同じのを着た。



「わー! 美奈似合ってるぅ! こりゃ男子たちが大騒ぎだね!」

「真凛も似合ってるよ。わたしは何だか慣れそうにないなぁ……」



 衣装係の子たちがわたしを取り囲んで、スカート丈がどうのこうの、とか言ってる。

 わたしは着せ替え人形になった気分でじっとしていた。

 それから、給仕係の当番表ができたから、わたしはそれを帰ってから早月くんに見せた。



「早月くん、これわたしの当番表。後半になったよ」

「よかったぁ、俺のお化け屋敷の当番とかぶってへんわ。絶対行く!」

「あんまり期待しすぎないでね?」



 早月くんに、あの衣装見られるんだ……恥ずかしいな。

 その日の夕食は、わたしも食材を切るのを手伝った。ビーフシチューだった。

 お母さんが言った。



「美奈、包丁使うの上手になったね。最初は危なっかしくてどうしようかと思ったけど」

「もう、わたしだって中学生だよ? これくらいできますぅ」

「お母さんから見たら、中学生はまだまだ子供ですぅ」



 そう言って、顔を見合わせて笑った。

 早く大人になりたいな。

 わたしの思う、大人は……。

 自分の気持ちを自分で整理できて、きちんと行動できる人。

 浮かんだのは、西条先輩の顔だった。

 きっと、たくさん、たくさん考えて、わたしに告白してくれたんだよね。

 わたしが早月くんのことを好きなことを見抜いていて、それでも。



「美奈、どうしたの? ぼおっとしちゃって」

「お母さん、何でもないよ。スプーン並べてくるね!」



 少しずつでもいいから近づいていこう。自分が思う、大人の姿に。
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