いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

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 クリスマスイブ。

 わたしは白いニットに、ベージュでチェック柄のプリーツスカート、茶色いダッフルコートを身に着けた。

 アクセントは赤いマフラー。

 クリスマスデートだから、赤は必須でしょ、って真凛が。

 リップクリームを塗って準備万端。早月くんの部屋の扉をノックした。



「早月くん、いい?」

「ええで! 行こかぁ!」



 早月くんは、白いパーカーに黒いダウンジャケットというラフな格好だった。



「おおっ、美奈ちゃんめっちゃ可愛い格好やん!」



 そんなことないよ、って今までのわたしなら言っていたかもしれないけれど。



「ありがとう、早月くん」



 そう、しっかりお礼を言えたんだ。

 電車に乗って、大きなツリーが見える広場まで。早月くんは見上げながら声をあげた。



「わぁっ、大きいなぁ! 白とシルバーで統一されててめっちゃオシャレ!」

「写真……撮る?」

「撮ろう撮ろう!」



 ツリーの前には、写真を撮る人の列があって、係の人に写してもらった。

 早月くんとは、今まで何回かツーショットを撮った。

 もしかしたら、これが最後になるかもしれない。

 それでもいい。

 この想いをきちんと伝える。

 今日はそのために来たんだから。

 ケーキ屋さんでも少し並んだけど、早月くんは待つ時間も楽しそう。



「美奈ちゃん、どれにする? やっぱりクリスマスならではのもんがええかなぁ?」

「これは? ブッシュドノエル」

「ええなぁ! 決定!」



 窓際の席に通された。早月くんとはテーブルを挟んで向かい合う形。

 早月くんがコーヒーを注文したから、わたしもそうした。

 そして、運ばれてきたのは、イチゴやサンタさんや雪だるまの乗ったにぎやかなブッシュドノエル。



「めっちゃ可愛いやん!」

「食べるのもったいないね」



 写真を撮ってから、二人で取り分けて食べた。

 美味しいはずなのに、この後のことを考えると胸が詰まる。

 でも、わたしは決めたんだ。

 今日ここで、しっかりと自分の気持ちを届けるんだって。

 ブッシュドノエルを食べ終わって、コーヒーが残り少なくなった頃。

 わたしはじっと早月くんの瞳を見た。



「ん? どうしたん?」

「早月くん。今日は、どうしても言いたいことがあって誘ったんだ」



 わたしはコホン、と咳払いをして、とうとう打ち明けた。



「わたし、早月くんのことが好き。いとことしてじゃなくて、男の子として好き。もし、もし、早月くんがよかったら……わたしを彼女にしてくれませんか?」



 ぱちぱち、と早月くんはまばたき。それから、困ったような顔をするから、ダメだったかな、って思ったけど、違った。



「……先に言われてしもたなぁ。俺から言おうと思ってたんやけど」

「えっ?」

「俺もな、美奈ちゃんのこと、好きやねん」
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