いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

04

 入学式が明日に迫った。

 今日は念願のスマホ契約の日。

 早月くんも一緒だ。



「わたし、この機種にしようってずっと決めてたんだ」



 店頭で手に取ったのは、淡いピンク色のスマホだった。早月くんが言った。



「へぇ……俺、機種にはこだわりないし、これの色違いにしようかな」



 早月くんは、青色のスマホにした。

 わたしはお母さん、早月くんはお父さんがスマホの契約をして、説明も聞いて。

 お昼ごはんをファミレスで食べて、帰ってきた。

 リビングで、お母さんがわたしと早月くんに言った。



「いい、二人とも。スマホを使うルールはきちんと決めるからね」



 お母さんは色んな条件を出してきた。

 実際に会う友達以外の人とは連絡先を交換しないこと。

 新しいアプリを入れる時はお父さんとお母さんに相談してから。

 夜の九時になったらリビングの充電器に繋いで、そこからは朝まで使うのは禁止。

 その他、色々、色々……。

 正直うっとうしいけど、まだ中学生だもんね。お母さんが心配するのも無理ないか。

 お父さんとお母さんの連絡先を登録して、次は早月くん。



「まあ、毎日会うし、連絡することもそんなにないと思うけどなぁ」

「そうだね」



 早月くんは、試しにネコのスタンプを送ってくれた。

 わたしも送り返した。

 わたしのスマホでの初めてのやり取りが、早月くんとになっちゃった。

 それから、早月くんはこんなことを言った。



「カメラ使ってみたいなぁ。美奈ちゃん、一緒に撮ろう?」

「一緒に? い、いいけど……」



 早月くんは、自分のスマホの設定をインカメラにして、手を伸ばした。

 もっと近づかないと、画面に入らない……。

 触れるか触れないかの微妙な距離で。

 わたしたちはツーショットを撮った。



「ふふっ、美奈ちゃんは写真でも可愛いなぁ」

「もう、そんなことないってば」



 ここ数日、早月くんと一緒に暮らしているけれど。

 早月くんは、何というか、わたしを買いかぶりすぎだ。

 いとこのひいき目っていうやつなのかな……?

 わたし、別に可愛くも何ともないのに。

 撮った写真も、すっごく微妙な表情。

 けど、早月くんは嫌味のない爽やかな笑顔だ。

 本人を直接見るのは、恥ずかしいからできないけど、写真の中の早月くんをまじまじと見てみる。

 本当にわたしたち、血が繋がってるの? と不思議になるくらい、似ていない。

 明日からは中学生。

 わたし、上手くできるのかな……?
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