いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

40

 この喫茶店には他にもお客さんや店員さんがいて。

 きっと、クリスマスソングもかかっていたはずなんだけど、わたしには無音の空間に思えた。

 早月くんも、わたしのことが……好き?



「実はさ、五歳の時からずっと、美奈ちゃんのこと好きやってん。日本に残ることにしたんも、美奈ちゃん目当て。そのうち言おう、言おう、って思ってたんやけど……タイミングわからんくて」

「嘘っ、そうだったの?」



 つまり、早月くんが宿泊合宿の時に言っていた「好きな人」って……わたし?



「ほんまやで。俺からも言わせて。美奈ちゃんのことが好き。俺の彼女になって」



 つうっ、と一筋の涙がこぼれてしまった。



「わわっ、美奈ちゃん!」

「ご、ごめんね、嬉しいの。でも、嬉しすぎて、夢みたいで、わけわかんなくて……」

「えっと……付き合ってくれるってことで、ええんやんね?」

「うん……喜んで」



 こうして、わたしたちは彼氏と彼女になった。

 喫茶店を出ると、早月くんが言った。



「なあ、お揃いのもん買わへん? 俺らの小遣いやと、買えるもん限られるけど……」

「いいね。そうしよう」



 わたしたちが選んだのは、銀色の星のキーホルダーだった。まるで、二人で見たツリーのような。

 これなら、通学のリュックサックにつけられる。

 帰りの電車に乗る頃には、夕飯近くになっていて、お母さんからいつ帰ってくるのかメッセージがきていた。

 わたしと早月くんは、座席に並んで座り、電車に揺られていた。



「早月くん、帰ったらすぐ夕飯みたい。きっとクリスマスメニューだよ」

「楽しみやなぁ。叔父さんと叔母さんには、付き合ったことまだ内緒にしとこか」

「そうだね。うるさそうだし」

「でもな、美奈ちゃん。知っとった? いとこ同士は結婚できるって」

「……うん」

「俺さ。これからずっと、美奈ちゃんのこと大事にする。そんで、大人になったら。親せきとかにも認めてもらって。そんで、結婚しよう」

「……うん!」



 どうしよう。ふわふわした気持ちが収まらない。

 すっかり日が落ちた住宅街を手を繋いで歩く。

 帰ったら、いつも通りにしないといけないのに。

 わたしったら、早月くんの手の温もりのことばかり考えている。

 もうすぐで、家の明かりが見えてくるという時になって、早月くんが足を止めた。



「……あのさ、美奈ちゃん。帰ったら、できひんから。今、していい?」

「な、何を?」

「……キス」



 そ、そんなのされたら、心臓が爆発しちゃうよ!

 でも、早月くんの声色はとても真剣だ。

 せっかくの付き合った記念日なんだし……。

 少し考えて、わたしはこう言った。



「ほっぺなら、いいよ」

「……んっ」



 右の頬に、軽く触れるだけのキス。

 それだけで、わたしは舞い上がってしまった。



「早月くん。好き。大好きだよ!」

「俺も好きやで。これからも、よろしくなぁ!」



fin
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