いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

05

 とうとう中学校の入学式。

 約束していた通り、早月くんが先に家を出ることになったんだけど。



「わぁっ、早月くん、カッコいい……!」



 早月くんの制服姿はとても大人びていて、自分と同い年とは思えなかった。



「美奈ちゃんも可愛いで。リボンがよう似合っとう」

「そんなことないってば」

「美奈ちゃんはもっと自分に自信つけなあかんなぁ。ほな、行ってきます」



 早月くんを見送って。わたしは十分くらい遅れて登校した。

 体育館に入る直前に、クラス分けを確認。

 わたしと早月くんは、同じ苗字だし、別々になるかな、と思っていたらやっぱりそうだった。

 わたしが一組で早月くんが二組。

 そして……。



「あっ! 真凛(まりん)!」



 一組のところに、高野瀬真凛(たかのせまりん)の名前があった。

 真凛は小学校からの仲良しだ。

 同じクラスだなんて、心強い!

 体育館の中に入って、一組の椅子のところに行くと、すでに真凛が座っていた。



「美奈!」

「真凛! やったね、同じクラス!」



 思わずハイタッチ。

 真凛は長い髪をポニーテールにしていて、すごく似合っていた。



「ねえ美奈、二組の方見てみて。すっごいイケメンがいるんだけど!」

「えっ?」



 真凛が指したのは、早月くんだった。

 早月くんは、背筋を伸ばしてピシッとしていた。



「本当だ、カッコいいね……」

「名前、何ていうのかな? 後で聞き込みに行かなくちゃ!」



 真凛はけっこう行動派。

 小学生の時も、自分から遊びを提案したり、クラスをまとめたりしていた。

 そんな真凛にちょこんとくっついていたのがこのわたし。

 わたしは、なるべく目立たずに中学生活を送りたいし、早月くんといとこだっていうことは、真凛にもバレないようにしないと。

 退屈な式典があって、教室に移動して。

 自己紹介も、無難なことだけ言って。

 真凛と一緒に帰って、わたしは制服から部屋着に着替えてベッドでぐったりしてしまった。

 大したことをしたわけじゃないのに、こんなに疲れてしまうなんて。

 これから、大丈夫かなぁ。

 少しすると、ドアがノックされたので、わたしは返事をした。



「早月やけど。入っていい?」

「いいよ」



 早月くんはまだ制服のままで、やっぱり眩しく見えた。



「入学式お疲れさん。友達できたみたいやね」

「あっ、真凛はね、小学校から一緒なの。っていうか……わたしのこと、見てたの?」

「だって気になるんやもん。学校で困ったことあったら俺に言ってや。学校では秘密やけど、いとこやねんし」

「うん、わかった……」



 そんなこと言われても、早月くんに頼ることなんてあるかなぁ……?

 できるだけ何事もないように、大人しく過ごそうと思った。
 

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