いとこの早月くんは関西弁で本音を言う

07

 一年生の校外合宿の日がやってきた。

 先生には、一年生の連帯感を強めるため、集団生活でのルールを学ぶためにすると説明された。

 バスで山まで行って、合宿所に一旦荷物を置いて、ラジオ体操をした後に山登り。

 わたしは真凛と一緒の班になった。



「ううっ、真凛、待ってよぉ……」

「美奈、大丈夫ー?」



 普段、運動なんてしないから、とってもキツい。

 真凛に励まされながら、何とか頂上まで登った。



「わあっ……!」



 そこから見えるのは、美しい山並みと、その間に流れる川だった。

 お弁当を食べて元気を充電。

 鬼ごっこをしてはしゃいでいる子たちもいたけど、わたしは真凛とのんびり。

 登ったら、降りなきゃいけないしね……。

 すると、早月くんが男の子たちに囲まれているのが見えた。



「早月! 写真撮ろう!」

「うん。いいよ。じゃあ俺が撮るよ」

「早月が写らないと意味ないだろ。誰か暇そうな奴に撮ってもらおう!」



 そして、写真を撮ろうと言い始めた男の子が、わたしと真凛のところに来た。



「なあ、写真撮ってくれよ!」



 気持ちよく応じたのは真凛だった。



「いいよー! はーいみんな、こっち向いてー」



 一瞬、早月くんと目が合った気がした。

 でも……気のせいかな?

 男の子たちははしゃぎながらポーズを決めた。

 終わった後、早月くんが真凛に言った。



「ありがとう、高野瀬さん」

「あっ、うん! お安いご用!」



 男の子たちが去った後、真凛がパシンとわたしの肩を叩いた。



「ねぇねぇ、早月くん! あたしの名前覚えててくれたんだー! 一回しか話したことないのに!」

「あっ、話したことあるんだ?」

「うん。彼女はいますか? って聞きに行った」

「そんなこと聞いたの?」



 相変わらずだなぁ、真凛は。



「いないんだって。美奈、狙い目かもよ?」

「もう……わたしはそんなのいいから」

「もし、美奈が早月くんと付き合ったらお似合いだと思うけどなぁ?」

「真凛、妄想膨らませすぎ」



 山を降りながら、ふと気付いたことがあった。

 さっきの早月くん……関西弁じゃなかったよね?

 家にいる時とイントネーションが違った。
 
 早月くんなりに、思うところがあるのかな。

 合宿所に戻った後は、少し休憩して、夕飯のカレー作り。

 わたしはよく料理の手伝いをしていたから、皮むきとかは慣れっこで、真凛にも頼られちゃった。

 早月くんのことが気になったけど、組が違うから遠くにいて、何をしているのかはわからなかった。
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