ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
空が綺麗であること。

毎日生きられていること。

こうしてプリンに胸を踊らせていること。

全てが私の幸せを形作ってくれている。

「はぁ…っ、はぁっ……」

ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな……。

向かう途中、また胸が息苦しくなって道路脇に身を寄せた。

はしゃぎすぎた、と言ってもいつもより少しだけ歩幅を大きくしてしまっただけ。

あぁ、ダメだな。もう体は前みたく言うこと聞いてくれないんだから歩くのも何をするにも慎重にならないと。

深く息を吐いたり吸ったりしてなんとか元の呼吸のリズムになるまで待った。

と、その時。

「なんだー? この女」

地面にしゃがみこむ私の後ろから低く、威圧的な男の人の声が聞こえてきた。

やば……。通行の邪魔だったかな…。

「あんた、うちの事務所の前で何やってんだ」

「はぁっ、はぁっ…ごめんな……さ…」

息も絶え絶えに、更に道路脇に身を寄せて邪魔にならない位置に移動する。

少し視線を上げると1人どころじゃなくて大勢の男の人がいた。みんな髪色が明るくてなんだか怖い印象を受ける。

知らない人…しかも男の人に囲まれて変に緊張してしまう。おかげでこうしてしゃがんで休憩しているというのに呼吸は荒くなっていく一方。
< 14 / 183 >

この作品をシェア

pagetop