ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
いい人……? なのかな。

「あ、結」

出ていったと思ったらもう1度。何か言い忘れた様子で戻ってきた組長さん。結くんにこう告げた。

「心臓、悪いんだろ? 旦那は妻のこと守るもんなんだからちゃんと見ててやれよ」

「はい」

……てっきり、知らないと思っていた。

私の心臓のこと。

でもあの口ぶりだと、多分知っている。

結くんが話したのか、組長さんの方で私の素性を調べた際に分かったことなのかは、曖昧だけど、でも確かに組長さんは私の病気のことを知っていた。

反対……しないんだ…。

受け入れてくれるんだ…

「あの…」

「?」

咄嗟に疑問が口から飛び出していた。

「反対……しないんですか? だって私……」

もう、先が長くない。

結くんを悲しませてしまう。

私と一緒になることは、きっと100人中100人が反対すると思う。

こんな人間が恋愛することは罪。

生まれてからずっとまるで、常にうしろ指さされているような、そんなモヤモヤが心の奥底に張り付いていて、離れない。

こうも何のお咎めもなく祝福される、というのはすごく不思議だったのだ。

でもその時。
組長さんが至ってシンプルな疑問を投げつけた。


「身体に疾患がある人間は幸せになったらいかんのか?」
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