ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
それから車に乗り込んで、車内でポツリ、と結くんが言った。

「俺ずっと孤児院で育って、15で今の組長に拾われたんだ。俺の父親みたいな人。今まで世話になった人だから会わせたかったんだ」

結くんが施設で育った、っていうのは前にチラッ、と聞いて知っていた。でも組長さんとの関係が良いとか悪いとかそこまで詳しく聞いたことはなかったから、父親みたいな人、と思っていると知ってなんだか素敵だな、と思った。

血の繋がりなんかなくても、人生の節目に会いたいと思える。そんな関係性はどんな形であれ素敵だ。

「そうでしたか……。会えて良かったです。大人でかっこいい方でした」

「……俺よりもか?」

「あっ、いえ! え、と…もちろん結くんが1番ですよ?」

「そうか」

「はい」

危ない……っ。

今なんか一瞬結くん怖い顔した。

でも嫉妬、とか。してくれてるのかな?

だとしたら嬉しいな。

それにしても……

ーー旦那は妻のこと守るもんなんだからちゃんと見ててやれよ

組長さんの言葉が脳裏を横切る。

あの時、私は…

結くんが時々言うやつだ…、と思った。


クスッ、と思わず笑みがこぼれ落ちた。





結くんは組長さんによく似ている。
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