ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
「奥さんに作って欲しい料理ナンバーワンらしいので肉じゃがにしてみました…」

「ふっ、いろいろ考えてくれてくれたんだな」

真柴さんの助言通り、肉じゃがにして正解だった。

「いえ…っ、お誕生日おめでとうございました。2ヶ月近く過ぎてしまって申し訳ないです。来年はちゃんと当日に​────」

それまで動いていた私の箸がピタリ、と止まる。

「……」

そっか…。

もう来年…来ないかも、なのか……

「いえ。なんでもないです」

忘れてください、と付け足す。

でも結くんは言ってくれた。

「お祝いして。来年も再来年も」

向けられたおひさまのようなその笑顔がぼんやりと滲む。

「…はい」

小さく頷いて、パクリとじゃがいもを口に運んだ。

味付けはほんのり甘辛くしたつもりなのに、どうしてかしょっぱかった。


それからお風呂に入った。

明日は結婚式だから、と、いつもより多めにリンスを付けたりして。湯船にゆっくりと浸かった。

2月上旬の気温はまだまだ寒くて。正直1度入った湯船から出るのは毎年億劫だけど、今日はすんなり出れた。せっかく結くんといられる時間が確保出来たんだ。

1分でも1秒でも長く結くんと一緒にいたい。

きっと、そう思ったから。
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