ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
式場に着いたら直ぐにドレスに着替えるだろうからそれまでの服。だけどいつだって結くんに可愛い、って思ってもらいたいから、手は抜けない。

「じゃあ行こうか」

「はい」

手を繋いでマンションを出ると、すぐに真柴さんの運転する車に乗り込んだ。車内でも手は繋いだまま。

「いやぁ…、おふたりの晴れ姿、姿超楽しみっす」

日常が一気に戻ってきたみたいで、何だか和む。

少し前まではこれが日常だった。その少し前まではこれは日常なんかじゃなくて、非日常だったんだよね。

人生っていつどうなるか全く予想出来ないな…。

隣に座る結くんをちら、と眺めて。しみじみそう思った。

***

控え室。

係の人に手伝って貰いながらウェディングドレスに着替えてヘアメイクを済ませた私は鏡の中の自分をジーと、見つめていた。

真っ白なウェディングドレスを身にまとった自分はまるで自分じゃないみたいで……。

だけど自分で。

なんだか不思議な感じ。

この姿を見たら結くんはなんて言ってくれるんだろう、と今から胸が踊るようだった。

そんな時。
コンコン、と扉がノックされた。

「ももちゃーんっ」
「わぁ! ももちゃんだー!」
「きれい! かわいい!!」

しあわせ園のみんなだ。

声を弾ませて、ご機嫌にぴょんぴょんと飛び跳ねているみんな。相変わらず無邪気で可愛い。

「みんな…っ。来てくれてありがとう。あれ? 泉さんは?」

みんないるけど泉さんの姿だけ見当たらないので尋ねる。すると

「いるよ! いずみさーん」
< 155 / 183 >

この作品をシェア

pagetop