ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
カタコトみたいになってしまったけどちゃんとその言葉は結くんに届いてくれたみたい。

「ふっ、ありがとう」

笑みを零す結くん。

この人が、私の旦那さん。

すぐにパッ、とそう感じられたらいいのに、まだ信じられない気持ちもあった。

それから私たちは腕を組んで、扉の方に向き直った。

あとはこの扉が開くのを待つのみ。

「1つ。聞いていいですか」

「ん?」

「どうして…私のことを好きになって下さったんですか」

それもヤクザの若頭ともあろうお方が。

どうして…

ずっと不思議に思っていた。

いつか聞こう。そう思い続けて今に至る。

結くんはこう答えてくれた。

「一緒にいると幸せな気持ちになれるから」

「え?」

「‪”‬しあわせになってくれますか‪”‬小桃、最初そう言っただろ? 臓器売り飛ばされる、とか言われて全身ブルブルに震えてんのに。今にも泣きそうな顔してんのに。何言ってんだよ、って正直呆れた。でもあの状況で他人の幸せを願える人間は小桃がはじめてだった」

両頬をむにっ、と挟まれる。

「ふいに見せる笑顔が好きだ。不安げに俺の顔を見上げるその上目遣いが好きだ。小桃の全部が好きだ」

逃げ場を無くした私にぶつけられる言葉達。
どれも嬉しくて胸がいっぱいになる。

「小桃と暮らし始めてから家に帰るのが楽しみになった。手離したくない、とか柄にもなく思って、別に毒なんか入ってないってのに指輪を付けて脅すような真似をして縛り付けた」

ふふっ、なんだ。それも脅しだったんだ……。
< 158 / 183 >

この作品をシェア

pagetop