ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
「……っ、」

「特にサナちゃんとか。ムキになってサナのほうが、さきにももちゃんに、であったんだもん、とか言ってきた」

「……」

食べ終わったプリンのカップをコトン、と置きながら、結くんは参ったように言う。

「ははっ、それ言われたら俺、勝ち目ないじゃんねぇ?」

「……ぐすんっ、…っ、なんで子供に張り合ってるんですか……」

「ヤクザは見栄張るもんだから」

結くんはヤクザの物差しで子供と接してるんですか……

「…小桃」

サイドテーブルにあるティッシュを数枚取って、それを頬に当ててくれる結くん。

「……こら」

結くんは少し困ったように眉を下げて、そしてひだまりのような笑顔を向けてくれた。

とても、‪”‬こら‪”‬って言葉とは合わない表情をしてた。結くんの瞳は今にもこぼれ落ちそうな涙が溜まっている。

「結くん…」

私…もうこの人を、悲しませたくない。

「最後にお願い……、してもいいですか?」

「ん?」

「もう……」

言わなきゃ。

ちゃんと言わなきゃ…

心の中で‪”‬言いたくない‪”‬と叫ぶ自分を無視して。
臆病な自分を何とか鼓舞して私は続けた。

「もうここには…、来ないでもらえますか?」

「……なんでだ」

「弱っていく姿を……、見せたくありません」
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