ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
結くんにだけは見られたくない。

これからやつれていくであろう頬も。
痩せて、骨が浮き出てしまうであろう身体も。

好きな人にだけは…見られたくない。

ずっと可愛いと言ってくれる私のままであなたの記憶に残っていたい。結くんが私の為に、泣いてくれる心の優しい人なのも知っている。でも、結くんの涙はもう見たくない。結くんを泣かせたくない。

これは私なりのケジメ。そう思ったのに……

「願いを変えろ。それは叶えられない願いだ」

結くんは……、

本当にヤクザですか?
極悪非道なんですか?

そんなふうに言ってくれるあなたに私は何度救われたか。

「じゃあ​────」

蓋をしたはずの本音が、いとも簡単に溢れていく。あぁ……私きっと何度生まれ変わってもヤクザにだけはなれないな。

ケジメとか…、意思が弱すぎて…、無理みたい……。

「……私が死ぬまで…………、ずっとそばにいて欲しいです…、ごめんなさい……」

「……なんで謝る」

「ごめんなさい……」

スっと抱き寄せられたかと思ったら、結くんが鼻をすすりながら涙声を発した。

「…最初からそう言え」

どうしたって涙が止まらない私の背中を結くんは、飽きることなくトントンしたり。スリスリとさすったり。いつまでも宥めてくれた。



結くん。

私…、

あなたが好きです。

大好きです。
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