ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
【結side】

それから小桃はぐったりとベッドに横たわっていることが多くなった。

俺がそばにいることも。

知らないみたいに。

目を閉じていることが多くなった。

「小桃」

「…っ」

時々呼びかけたら、重そうなまぶたを一生懸命あげてくれて。呼びかける度に俺がそばにいることに喜んでいるみたいに、少しだけ酸素マスクの中で口角を上げてくれた。

今にも消えてしまいそうなその笑顔に俺も、そっと微笑み返す。

口数も減って。
食欲もなくなっていって。

いつかのように顔を赤らめて寝顔を見るな、と主張してくることはもうないし、そもそもそんなこと頭にないみたいだった。

そんな小桃の姿にその時は、刻一刻と近づいているんだ、と日に日に強く思うようになった。

「俺、そばにいるからな。ずっとここにいる」

時々思い出したように微弱な力であるが手を握り返してくれる。

そうするとここで小桃が生きてくれていることを実感する。


暖かくて、ちっこくて、細い手。

俺と違って柔らかくて。女の子の手。


ずっと握っていたいと思った。この先も一生​───────…








.

それからしばらくして季節は春先。

宣告されていた寿命より、2ヶ月も長く生きてくれた小桃は天国へと旅立った。
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