ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー

泉さんはこの園をたった1人で経営している園長先生。

わざわざ年齢は聞かないけど見た感じ40歳くらい。優しくておっとりした方。

「今日早帰りだったんです」

そんな方に、しれっと嘘をついてしまう自分が嫌いだ。

​────森山家と縁を切ったあと。私は実の母の旧姓である『茅島』と名乗ることにした。

この名前を呼ばれることにも、もうすっかり慣れてしまったな。

そんなことをしみじみと思いながら、エプロンに【かやしま こもも】の名札を付けた。

「手伝います。今日はそうめんですか？」

「ありがとう〜。そう！ スーパーで安くなってたのよ〜」

腕まくりをしながら泉さんの隣に並んで台所に立つ。

ここでは、私が心臓病を患っていることは伏せている。言ってしまえば気を遣わせてしまうかもしれないし、学校みたく体育の授業がある訳じゃないからある程度はやり過ごせる。


「じゃあ、手を合わせてください」

「「いただきます」」

ご飯を食べる時は、みんないつもこの長机で横並びになって食べている。

私と泉さんはその両端に。

小さい子からお茶とかよくこぼしてしまうからすぐ対応出来るように大体いつもこの配置だ。

「おいしー！」

「つるつるしてるねー」