ラストウェディング ー余命半年、極道の花嫁になりましたー
***

「おやすみなさい」

「…」

あれ。どうしたんだろう。

22時過ぎ。
いつも通り結くんに後ろからピッタリと抱きつかれた状態。

いつもはここでおやすみ、って言って電気を消してくれるのに。

「ゆい、くん…?」

後ろが気になって身体を動かす。くるり、と寝返りをうって結くんの顔を覗き込めば…

「…」

あっ…

寝てる……

疲れてるのかな。

無防備に瞼を下ろし寝息を立てる結くん。

乱れた前髪に手を伸ばして横に流す。

結くんのお仕事内容については深くは聞かないけど、多分そういう…あれだと勝手に思っている。いわゆるシノギ、ってやつ。

私が想像すらつかないような事してるのかな。極悪非道、って周りに言われちゃうぐらいだもんね。なのに、寝顔はこんなに可愛いなんて。

ギャップ、ってきっとこういうのの事言うんだろうな。

今日は私が代わりにサイドテーブルの電気を消す。

「……おやすみなさい」

起こさないように小さく呟いて眠りについた。

***

「何にしようかな」

さっきから冷蔵庫をパタリパタリ。

今日の夜ご飯のメニューを考えていた。

今日は朝、結くんを見送ってからなんだか体調がずっと優れなくて。ソファでゴロゴロしていた。

お昼ご飯も喉を通りそうになくて、私1人だからそもそも作る事を放棄してしまった。
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