潮風がシャボンに惚れたら
「俺ぁ、コイツとがいい!!」

 ミミーはそんな彼に、突然腕を掴まれながらそう言われた。

「えっ……え??」

 当然ミミーはわけも分からず呆然。
 気付けば周りの街の者たち含め、海賊の仲間たちもがこちらを見て笑い合う。

「そんなガキみたいな小娘をか!!」

「馬鹿なやつだ!他にいくらでも居るというのに!!」

「じゃあこれからガキ同士で“お楽しみ”ってやつかい!」

 しかし彼に気にした様子は全くない。
 自信満々といった様子で、驚くミミーを乱暴に抱きしめたまま皆の前でニッと笑った。

「アニキアネゴたちや親分がどう言おうと構わねえ、コイツとにするっ!!宿はどこだ!!」


 こうしてミミーは何もわからないうちに小さな宿に連れてこられた。

「陸の女なんて久しぶりだ、胸が高鳴るぜ……!!さあ見せろ!!」

「うう……」

 ミミーは軽く転がされたベッドの上で、人魚の頃に人間に捕まった者の末路を聞いたことを思い出し、うずくまったまま泣きながら震えた。

「ったく、痛いことなんかしねぇよお!イイコトすんだからさ!!」

 ニカッと無邪気な笑顔を浮かべる彼に、ミミーは思わず見惚れる。

 それは屈託の無い笑顔だった。
 海の中から出て初めて見た太陽のように温かく、眩しいとすら思うほど。

「どうすりゃいいかは分かってる!南の大港のアネゴの相手、させてもらったこともあるからな!!」

 そう言うと彼は、ミミーを迎え入れるように向かって手を大きく広げる。
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