潮風がシャボンに惚れたら
 しかし、

「こ、怖いです……怖いっ……」

 またも怯えるミミーに彼は困ったように笑って頭を掻くと、これ以上怯えさせないよう今度はそっと近付いた。

「大丈夫大丈夫、優しくすっからよ」

 彼はそう言うと、ミミーを優しく抱きしめ直し、頭を撫でる。

「そうだ、俺のこと好きンなれよ!そうすりゃもっと怖く無くなるかもしんねえ」

「本当、ですか……?」

 ミミーが尋ねると、彼は大きくうなづきながら言った。

「だってこれは、“あんたのことを身体ごと好きにならせて下さい!”ってな意味の行為だからな!」

 ヤンチャで自由奔放な海賊仲間たちに教えられたせいか、礼儀も順序も全く無っていない状態で宿に半ば強制的にミミーを連れ込んだ彼の言葉。

 しかし世間知らずなミミーは、真っ直ぐな彼のその言葉を信じた。

「海賊さん……私を、好きになってくれますか?」

「もちろんなるぜ!教えてくれたアネゴたちの言葉は間違ってねえ。それに、俺がお前を選んだんだからな!!それと、俺のことは“ハレカゼ”って呼んでくれ」


 彼はその夜、不器用ながらも優しくミミーの相手に熱中した。

 ミミーはされるがまま。
 しかし初めての痛みも彼に励まされながら乗り越え、人間になってからも初めての、不思議な感覚を味わうことになった。
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