潮風がシャボンに惚れたら
 ……温かい。しっかりとしたものに、自分が抱かれているのを感じる。

 自分の身から溶け出た泡なのか、自分の入った海の飛沫で作られたものなのか。
 しかし、それはどちらでも無かった。

「……誰が死んで良いと言った!!?俺を待ってては、くれねぇのかよ!!」

 必死な声。
 そして愛おしい彼が、たくましい腕が、自分を……

 気付けばミミーの身体はまだ港の端の、彼の腕に抱かれてあった。

「俺ぁ海賊だぜ、欲しいものは手に入れる!!……もう、“元”だけどな」

 彼は眼帯のもう無い、左目についた古傷をミミーに見せながら照れくさそうに笑う。

 彼の笑顔は太陽のようだった。
 初めて会ったあのときも、そして今も……

「私はあなたのおかげで、生きている意味を見つけたの。あなたと会えてよかった、ハレカゼ……」

 ミミーは幸せと安堵の涙を流した。
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