潮風がシャボンに惚れたら
……

 あの時ミミーを置いた彼は、走りに走って海賊船の中へまっしぐら。
 海賊稼業を手伝うのは楽しかったが、やはり初めて自分で決めた相手であったミミーが諦めきれなかった。


「……親分、すいやせん!!今まで育ててもらったご恩、決して忘れたわけじゃ無ぇんですがっ」

 彼は船長を前に必死に頼み込む。
 そこで船長の、拳の一撃が彼の頭に。

「馬鹿野郎!!だから言ったろうがっ、てめぇはガキなんだとな!みごと仇で返しやがって……!!」

 彼は跪(ひざまず)いたままその痛みに耐えていた。
 船長は、今度はさらに低くゆっくりとした口調で彼に問いかける。

「二言は無ぇんだろうな?この先、相手も守れねえ、“まんま”も食わせてやれねえなんて、この船に縋ってくるようじゃあ……」

 彼は急いでブルブルと激しく首を横に振り、船長に向かってニカッと笑った。

「いいえっ!あの女は……ミミーは俺がこれから守って見せやす!!ずっと共に、生きていきやす!!」

 それを聞いた船長は小袋を投げてよこした。
 それはジャラリと重そうな音を立て、彼の足元へ。

「それ持って、とっとと出てけぇ!!二度とここには踏み入るんじゃねえ!!」

 それを聞いた彼は深く深く皆に頭を下げた。

「っ、親分、アニキ、アネゴ、今まで本当に、お世話になりやした!!」


 こうして彼は仲間たちの期待と熱い視線を浴びながら、船を降りたのだった。

……
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