わたしのせいしゅんものがたり
「私を?」
「や、まだライン交換してないなあって思ってさ」
「あー、そうだね」
梨沙と富井はラインを交換した。
「お前ほんとに鉄道好きなんだな、待ち受けが電車なんてさ」
「富井こそ、何これ、アニメのキャラ?」
「マインクラフト」
「知らない」
駅まで歩く2人。
「なんで鉄道好きなのに鉄道研究部入らなかったの?」
「やー、活動日が書道部より多いからかな。富井は?」
「俺はなんちゃって鉄道オタクだし、書道は好きだから」
「そうなんだ」
駅に着いて、改札を抜け、階段を下がる。
電車が来て私たちは乗り込む。
乗り込んだら突然「りーさちゃん!」と声がした。
振り返ると梨沙の中学時代の同級生の佐野有香ちゃんがいた。
「佐野ちゃん久しぶり」
「久しぶり〜!てか、あの男子、梨沙ちゃんの彼氏?」
扉側に寄りかかっている富井を見て言った。
「違う違う!ただの友達だよ!」
「本当〜?」
「本当だよ!本当の彼氏は別にいるし」
「梨沙ちゃん彼氏いるんだー!?いいなー!私にも紹介してよ!」
「はいはい」
中学のときもそうだったけど、めんどくさい友達だった。
「梨沙ちゃんの彼氏何組?」
「あ〜、12組。富井と同じクラス」
「富井ってあの男子?」
「そうだけど」
「マジか〜!ねえ、今度一緒に12組行こうよ」
「まあいいけど。てか佐野ちゃん何組?」
「7組。梨沙ちゃんは?」
「3組だけど」
「選抜進学かー、頭いいのね!」
そうこうしてるうちに『まもなく渋沢〜渋沢〜』とアナウンスが流れた。
「富井、またね」
「おう」
富井と別れて佐野ちゃんと一緒に電車を降りた。
改札を抜けたところで、これまた中学の同級生の斎藤晴香ちゃんに出会った。
「有香、梨沙ちゃん久しぶり!」
「久しぶり!晴香」
「久しぶりだね晴香ちゃん」
「二人共、花岡学園だったけ?」
「うん」
「私は伊勢原高校」
私たちのリボンのついたブレザーとは違うって地味めなブレザーを着ていた。
「ねえ、聞いてよ晴香!梨沙ちゃんたら彼氏できたんだよ!しかもボーイフレンドもいるし!」
「佐野ちゃん!ボーイフレンドもいる、だけ余計!」
「だって本当のことじゃん!」
「そうだけど、まるで私が浮気してるみたいじゃん!晴香ちゃん、私の彼氏はね、鉄道好きなんだよ〜」
そこまで言って「梨沙ちゃんて」と晴香ちゃんが言った。
「え?」
「梨沙ちゃんて、なんかキャラ変わった?」
「え、そうかなあ?」
「うん。前はもっと大人しかったのに明るくなったよね!」
「え、うん、まあ、そうかも」
「彼氏ができたからだよ!」
佐野ちゃんがちゃちゃをいれる。
でも確かに私は大人しかったのに、前より明るくて積極的になった気がする。それもこれも涼太や富井、穂乃香たちと出会ったからだと思う。
「じゃあ二人共またね」
晴香ちゃんが去って行く。
高校生活充実してるなあと思った。
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