わたしのせいしゅんものがたり
2
「大桃?知らないな」
私の席の前に座っている友達の佐久間穂乃香が腕組みをしながら言った。
「ももちさ、それってストーカーじゃない?」
とは酒井瑠奈のセリフ。ちなみに、ももち、とは梨沙の愛称だ。
「鉄道のキーホルダーが気になって来たなんてね」
木曽まおみもうなずく。
「やっぱりわからないよね、私に突然話しかけた理由なんて」
「面識はないんでしょ?」
穂乃香が聞く。
「全然ない。今日初めて会った」
「じゃあストーカーかもね。ももち気をつけなよ?」
「うん、まあ」
でもストーカーっていう感じじゃなかったけどなあと梨沙は思った。もしかしたら私の知らないうちに会ってたのかもしれないし。それに真面目そうだったし。

お昼休み。
仲良し4人組で食べていると、教室の外をうろうろしている男子が一人。ガラス越しにこちらの様子を伺っている。よく見ると大桃だった。梨沙と目が合うと少し照れ笑いをした。
「あ、あれは」
「ん、何?あれって!あれがもしかしたら大桃?ストーカーかよ」
穂乃香が言う。
「ももち、出待ちされてるね」
「うん、まるでアイドルの出待ちだね」
瑠奈もまおみも言う。
他の生徒も気づいてこちらへ寄ってきた。一人の生徒が
「あれは大桃くんだよ。私中学で同じクラスだったんだ」
と言って教室の外に向かって「大桃くーん、どうしたの?」と叫んだ。そしたら恥ずかしくなったのか、階段の踊り場まで去っていってしまった。
「私、行ってくる」
梨沙はお弁当を片付けて、階段の踊り場へと向かった。
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