わたしのせいしゅんものがたり
「ごめんね、なんか待ってたみたいで」
「ああ、大丈夫だよ。みんなに見られたっておかしくないくらい俺、不審なかんじだったし」
「そんなことはないと思うけど。ところでどうしたの?」
「小峰さんのことについて話に来たんだ」
二人は踊り場で話し始めた。
「君にとっては初めましてかもしれないけど、俺にとってはそうじゃないんだ。去年の中学の夏休みのときにここの高校のオープンスクールがあったでしょ?あのとき鉄道研究部に行こうとしてる君を見かけた。リュックに今の鞄にさげてる京浜東北線のパスモケースをさげてて女子なのに鉄道が好きなんだなあって思った」
「それで私のことを知ってたんだね」
「うん。それから2月にクラス編成試験があったでしょ?あのとき同じ教室で試験を受けてたんだよ」
「え?そうだったの?」
「パスモケースで例の子だってすぐわかった」
「そんなに会ってたなんて…」
正直梨沙は大桃のことは知らなかった。でも大桃は梨沙のことを半年以上前から知ってたのだ。
「ところで小峰さんはどこに住んでるの?」
「ああ、秦野だよ。電車通学なんだ」
「そっか。俺は開成。近いから自転車通学だよ」
そこまで話したところでチャイムが鳴った。
「じゃあまた」
「うん、連絡待ってるから」
不思議な関係が生まれようとしていた。
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