わたしのせいしゅんものがたり

恋に気づく

1晴れの空。今日はオリエンテーション合宿の日。1泊2日の泊りがけで行く入学早々一番のイベントだ。
行き先は河口湖。
学校には大型バスが12台止まっていた。クラス単位で行動することになっていた。
梨沙は田中千尋ちゃんというクラスメイトの隣の席に座った。
「おはよう、千尋ちゃん」
「おはよう、ももち。まだ眠いね」
「だねー」
そう言いながら梨沙は大桃のことを考えていた。
向こうについたら少しは会えるかな?
そうこうしているうちにバスは学校を発車した。
「向こうについたら、まず昼食だから出席番号順に並んで食べること」
担任の大島先生が連絡事項を述べている。
うとうとして、梨沙は居眠りをした。
夢には大桃が出てきて笑いかけてくれた。
そして、なぜだか2人は恋人同士になってた。
そこで、目が覚めた。
「ももちったら寝てたの?もう着くよ」
千尋ちゃんに言われ我に返る。
もう河口湖か。湖が見えてきた。

2昼食はカレーライスだった。
「昼食の後は一旦部屋に戻って、それから体育館でオリエンテーションを行うからそのように」
食べ終わった後、各自一旦部屋に戻った。
木曽ちゃん、穂乃香、瑠奈とは同じ部屋になっていた。理恵ちゃんとは残念ながら別の部屋だけれど。

そして、体育館へと向かう。その最中に12組が隣を通った。大桃がその中にいた。私を見かけるととびきりの笑顔で微笑んだ。梨沙もそれに応えるように笑いかけた。たったそれだけのことなのにすごく胸をときめかせた。梨沙はふと思う。大桃に対するこの感情はなんだろう?
「ももち、大桃のことばかり見てる。好きなの?」
穂乃香がニヤニヤしながら聞いてくる。
「まだそんなんじゃないよ」
言いながら梨沙は好きなんだ、と自覚した。
そうだ、この感情は恋なんだ。
「えー、これから校歌の練習をする。生徒手帳を開いて」
梨沙は校歌の書かれた生徒手帳に目を落とす。
「汚れを知らぬ青春の〜、か」
「なになに、気になるの〜?その歌詞、今のももちそのものだもんね!」
「穂乃香!」
全くもう、穂乃香ったら図星なことを言う。
「絶賛、大桃と青春中だもんね〜、いいね〜」
「まあね〜」
それから12クラスあわせて校歌の練習をした。『汚れを知らぬ青春の〜』の部分のときだけ穂乃香が私の隣で特に『青春』の部分だけ誇張して歌った。
大桃のことを好きだということがバレバレだったらしい。
校歌の練習の後は般若心経の唱え方の練習をした。このは仏教系の学校ではないけれど、昔からの伝統で般若心経をカンペなしで覚えることになっていた。
「えー、今日の昼のオリエンテーションはここまで。夕食の時間まで各自部屋にいること」
大島先生がそう言うと、各自解散となった。
梨沙が体育館から出てくると、なんと大桃がいた。
「小峰さん、ちょっといい?」
「うん」
梨沙は穂乃香たちと一旦別れて、大桃と外に出た。
「小峰さんがいるクラスのほうばかり見ちゃったよ」
「私も大桃くんがいるクラスが気になってた」
「なぜだか皆のなかから小峰さんを見つけるのが得意になっちゃって」
大桃も梨沙と同じくお互いのクラスが気になっていたらしい。
「こうして話してるだけでも嬉しいよ」
「私も!」
「男子と女子、部屋が分かれてるけど、また明日も会えるかな?」
「会えるよ。会いたい!」
「そうだね、あ、じゃあ、またね」
友達と一緒に大桃は去っていった。
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