学園の王子様は、私だけのお世話係!?


高校1年の1学期も残りわずかとなった、7月のある日のこと。


長かった梅雨が明け、夏本番がやって来た。


放課後。この日の授業が終わった俺は、流れる汗を拭いながら学校の最寄り駅まで歩いてきた。


いつもは執事の深澤が車で迎えに来るが、この日深澤は急な体調不良で休みだった。


我が家に仕えている他の者が運転して迎えに来ると言ってくれたが、俺はそれを断り、たまには自分の足で家に帰ろうと思ったのだった。


「それにしても、暑いな」


ただ立っているだけで汗が吹き出る俺は、自分の手で顔をパタパタと扇ぐ。


そうこうしてるうちに電車が駅のホームへとやって来たので、俺は乗り込んだ。


夕方の電車内はまあまあ混んでいて、俺はつり革を手に立つ。


ガタンゴトン。


スマホを片手につり革に掴まりながら、しばらく電車に揺られていると。


「あっ、あの」


……ん?
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