学園の王子様は、私だけのお世話係!?
「父の仕事の関係で、5年間アメリカのニューヨークに住んでました。といっても、小学5年生まではこっちに住んでたので、帰ってきたなーって感じです」
う、うそ。5年生までこっちに住んでたってことは、やっぱり……!
「久しぶりの日本で分からないことも多いので、色々と教えてください。これからよろしくお願いします」
彼が頭を下げるのと同時に、私は思わず席から立ち上がってしまった。
「あっ、あの。あなた……圭人だよね!?」
「えっ。もしかして、お前……絃葉か!?」
教壇に立つ転校生が、大きく目を見開く。
「久しぶりだなあ、絃葉〜〜!」
そして私だけを見つめながら、人懐っこい笑みを浮かべる圭人。
その途端、より一層ざわめく教室。
──“絃葉”。
笑顔で私の名前を口にした彼は、私の知らない低音ボイスをしていた。
圭人ったら、いつの間に声変わりしたんだろう。
「もしかして転校生くん、宮崎さんの知り合い!?」
「うん。圭人は、私の幼なじみなの」
クラスでも目立つ男子に聞かれ、私は答える。
圭人は、生まれた頃から小学校5年まで家の近所に住んでいた男の子。
幼稚園から小学校まで一緒だった私たちは、毎日のようにふたりで遊んでいた。
圭人がお父さんの仕事の都合で、アメリカに引っ越していってからは会えずにいたから。
実に5年ぶりの再会だった。
「まさか、こんなところで絃葉に会えるなんて! 会えて嬉しいよ!」
大きく手を広げ、満面の笑みでこちらへと向かってくる圭人。