学園の王子様は、私だけのお世話係!?
今にもハグしそうな勢いの圭人に、私は慌てて「ストップ!」と言った。
「え。どうした? 絃葉」
「ごめん。見てのとおり、ほら。私いま、右腕を骨折してるから」
左の人差し指で、自分の右腕を指さす私。
右手を骨折しているのも、もちろんあるけど。
クラスの女子たちが、こちらを射るような目で見ていたから。少し怖気付いてしまった。
イケメンの圭人は、小学生の頃からすでに女の子にモテていた。
だから、転校初日早々にもうファンがついてる様子が見てとれて。さすが圭人って感じ。
「絃葉、骨折って大丈夫かよ!? お前、昔からドジなところがあるから。もしかして、木登りでもしていて落ちたとか?」
「き、木登りって! もう子どもじゃないんだから。そんなことしないよ」
「ははっ。ごめん、ごめん。でも、昔よく俺と一緒に家の近くの公園で木に登っただろ!?」
にかっと、歯を見せて笑う圭人。
高校生になった圭人との突然の再会に、びっくりしたけど。
この笑顔を見たら、やっぱりあの“圭人”だって懐かしくなった。見た目は大人っぽくなっても、中身は小学生の頃と変わらないなあ。
「宮崎、萩原。懐かしい友人と再会できて、話が弾むのは分かるが、これ以上は休み時間にするように」
「すみません!」
担任の先生に言われ、話を中断する私たち。
「それから、萩原の席は宮崎の隣だ」