側室転生ヒロイン、王太子の寵愛に溺れる〜最恐王太子との吸血婚〜

 そんな風に考察したところでつい最近やってきたばかりの側妃の発言など、直ぐに信用してもらえるはずもなく、その場で処罰されることになるかと思ったが…

「…エマの言うことが本当ならばこれは重大な問題です。あの花について調査する必要があります。彼女の処罰については調査が済むまで保留とします。」
「しかしっ…」
「王都の末端にある古城で身柄を拘束させてもらいます。花の調査が終わるまで、王太子との接触も控えていただきます。」

 カルラ様のおかげで地下牢に幽閉されるようなことは避けられたが…古城というのは一体どのような場所だろう?
 まさかこんな展開を迎えるとは思ってもみなかったので、今更ながら先の不安を考えると身体が震えてくる。

 騎士たちによって拘束されたまま、荷馬車に放り込まれ…目的地も告げられず、宮殿から追い出されるようなかたちで出されてしまった。

──ギルバートは今頃、驚いているだろうな。

 面倒なことになった…っと迷惑そうに顔を歪めて怒っている顔が目に浮かぶ。意地悪ではあるが、私に触れる彼の指先はいつも…優しかった。だからだろうか…会いたい、なんて思ってしまうのは─…

 しばらく荷馬車に揺られたあと、辿り着いたのは…廃墟のような古い建物。長年手入れがされていないのか、雑草に覆われ、今にも崩れてしまいそうな古いお城だった。

「一連の調査が終了するまで、こちらで過ごしていただきます。見張りの者も同行しておりますので万が一、逃走をはかられた際は…見つけ次第その場で処刑するよう命じられておりますので、大人しく部屋でお過ごしください。」

 なんとも物騒な話だが、確かに…あの花から毒が検出されなければ、私は王宮内を混乱させた罪人として何らかの罰を受ける必要があるのだろう。

 騎士の一人と共に古城内へ足を踏み入れたが、真っ暗で埃っぽい城の中はとても不気味で…正直今すぐ飛び出したい気持ちでいっぱいだった。

───お化け屋敷みたいっ…怖い、帰りたい。

 泣きそうになっている私の気持ちなど隣にいる騎士に伝わるはずもなく、階段を上がってすぐの部屋に通された。
 埃っぽさは相変わらずではあるが、ベッドや机、椅子などがそのまま放置されているので…なんとか生活することは出来そうだ。

「これでも比較的綺麗な方なので、この部屋をお使いください。扉の前で待機しておりますので…何かありましたらお声がけください。」

 鍵のついた部屋では無いものの…扉を一枚挟んだ先で見張られているというのは、なんとも息苦しい環境だ。

 この世界に暦や四季のようなものがあるのか不明だが…ドレス一枚で過ごすには少し肌寒い。一刻も早く毒が検出されて潔白であることが証明されることを願う。


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