隣の席の地味男子 実はイケメン総長で毎日がドキドキです!
学校までの道を二人で喋りながら歩く。
碧斗くんの話にはいつもあの四人が出てくる。
「工業行った阿修羅なんだけどさ」
碧斗くんの友達の東堂阿修羅くん。
生徒のほとんどが手の付けられない不良たちだという噂の工業高校に通ってるらしい。
「あいつ、見た目いかついだろ? だから入学早々先輩たちにケンカ売られまくったって笑ってたんだよ」
「笑ってたの?」
私が引き気味に尋ねると、「ああ、喜んでた。あいつケンカ大好きだから」と碧斗くんは呆れ気味に答えた。
「俺はもうケンカとかめんどくせーし、変に絡まれたくないからおとなしくしてんだよね」
むしろおとなしすぎて絡まれるどころか、話しかけられてすらいないけど、それはいいんだろうか。
「碧斗くん、その眼鏡ってダテ?」
「そう」
「なんで?」
「んー、これは龍二に言われてかけてみた」
お次は印南龍二くん。
「お前は目付きが鋭くてガン飛ばしてるように見えるから、メガネかけたほうがいいって言いやがんだよ。お前の方がよっぽど目付き悪いっつーのに」
たしかに。でも目を見られてガン飛ばされたなんて思う人はいないよ。うちは普通の高校だし。
「メガネっていえば京介覚えてる?」
「うん。西園寺くんね」
「あいつ頭よさそうだろ? いや実際いいんだけどさ」
「うんうん、海星だって言ってたもんね」
たしか、海星(県内一の進学校)で学年トップの成績だって言ってた西園寺京介くん。すご過ぎるって。
「だから、メガネかけてたら少しでも頭よく見えるかなーって思ってんだ」
「そ、それはどうかなあ……ダテなら外してもいいんじゃない?」
「は? 今さらとったらみんなビックリするだろ?」
大丈夫、誰も気が付かないから。って思ったけど口をつぐんだ。
「まふみたいに、愛嬌あればいいんだけどよ。あんな風にふるまうこともできないしな」
まふくん。五人の中で一番の癒し系、北条真冬くんだ。
「まふは高校行かずにNo1アイドルを目指すって言ってさ。今はダンスの特訓中なんだよ」
「そうなの!? でも北条くんならいけそうだよね」
北条くんだけじゃない。碧斗くん含めて全員のルックスがアイドル並みに整ってる。
「そうか? アイドルなんて夢のまた夢じゃね?」
「そんなことないって、なんなら碧斗くんだっていけるよ」
「だったら……相川だっていけるだろ」
「なんで私?」
「だって、カワイイじゃん」
真正面からの攻撃を、私は受け止めることができなかった。
「か、か、かわいいって!? ま、待って」
「そうやって照れてるところも」
「待って待って、とりあえず気を使ってくれてありがと!」
「なんだよ。ホントのことなのに」
「私がかわいいなら、ほとんどの女子たちはかわいいよ」
「いいから、素直に受け止めろよ。これでもけっこう緊張してんだから」
そう言って視線を合わせようとしない碧斗くん。
もしかして、照れてる?
私が顔を覗き込むように見ると、チラリとこちらを見て、また目をそらす。
そんなことを繰り返しながら、しばし、私たちは無言で語り合った。