隣の席の地味男子 実はイケメン総長で毎日がドキドキです!
翌日。
人のうわさは早いもので。
学校に行くともう別の話題で大騒ぎになっていた。
なんでも、昨日の放課後、弓道部員の女子生徒が不審な車につけまわされたという。
彼女の証言では、学校の帰り道に駅前の近くの通りで自分の後ろをゆっくり走る黒い車を見たそうだ。
最初は勘違いかと思ったらしいが、駅につくまでその車は後をついてきたようで、彼女はそのまま駅前の交番にかけこんだらしい。
ホームルームで担任から注意喚起がされると、みんな不審者に対する不安でいっぱいだった。
当然私もこの前男たちにからまれたばかりだし、他人事じゃない。
隣の席の碧斗くんが珍しく身を乗り出して話しかけてくる。
「橙子、今日部活だよな?」
「うん」
今の碧斗くんは学校モードなのに、眼鏡の奥の瞳には強い意志が感じられる。ギャップがたまんない。
何か大事な話をしたいのかな。
「遅くなるのか?」
「終わるの六時過ぎくらいかな」
「そっか」
少し気難しそうな表情を浮かべる碧斗くん。
もしかして心配してくれてる?
「大丈夫だよ。部員の沢村さんはすっごいかわいい子なんだよ。だから狙われたんだと思う」
「かわいいから狙われたってことなら、橙子も全然大丈夫じゃないじゃん」
彼はそう言って厳しめな視線を向けてくる。
「ん? だから私なんか全然──」
「心配だから送らせて。橙子になにかあったら、俺絶対後悔するし」
「……それは、バイクで?」
「うん、迎えに行くよ」
「ごめん。弓あるから、バイクは乗れないや」
「あーそうだったか。あれ、そういえばその沢村さんって弓道部だよな」
「そうだけど?」
「ってことは弓持って帰ってたんじゃ?」
「昨日は部活だったから、そうだよね」
「……そか」
碧斗くんは真剣になにか考えたかと思うとこう言ってきた。
「とにかく、部活終わったら一度連絡して」
「う、うん」
なんか、今日の碧斗くんはすっごい束縛してくるなあ。
あ、別に全然嬉しいからいいんだけど。
ってダメダメ。集中しないと。
はぁ、やばい。好きすぎる。
推しか彼氏か友達か。
私にとって碧斗くんはその全てに当てはまるような気がする。
っと、いけないいけない。またやっちゃった。
今から部活だっていうのに、恋なんてしてる場合じゃないよ。