隣の席の地味男子 実はイケメン総長で毎日がドキドキです!
告白
「橙子がいなくなって、どうしようかと思った」
「……信じてたよ。来てくれるって」
「俺のせいで、すまねえ」
「どうして? 碧斗くんのせいなんかじゃないよ」
「いや、原因は俺にある」
私は病室で碧斗くんと二人っきりで話していた。
昨日、あれから京介くんの親族が経営する総合病院に運ばれた私は、軽い検査などを受けて一晩過ごした。
警察沙汰とかになるとマズいので、親には下校中に貧血で倒れたと言ってある。
「阿久津は俺たち宵闇天使がつぶしたチームの生き残りだ。俺を恨んでるやつは山ほどいるが、あいつはその中でも別格のイカれたやつだ」
昔のことを思い出すように、目を伏せて碧斗くんは語りだした。
「俺たちのチームは、最初は五人でバカやってるだけの遊びみたいなもんだった。だけどいつの間にかデカくなりすぎちまって手に負えなくなっていったんだ」
眉間にしわを寄せながら語る碧斗くんの表情は、初めてみるものだった。
「そして去年、知らないところで膨れ上がった揉め事にケジメをつけた。つもりだった。でもこうやって関係ないやつも巻き込んじまって、後悔してる。ホントバカだよな……」
私はベッドから起こしている上体を碧斗くんに寄せて、彼の手をギュッと握りしめた。
「あまり思いつめないで、大丈夫だよ」
「そこら中で恨みをかってたのはわかってたから、高校入ってもおとなしくしてたし、身バレは極力さけてたんだ。橙子にもホントは知られたくなかったしな」
「そうなの? 別に私は気にしてないよ。学校での碧斗くんも、外での碧斗くんも、どっちも……」
そこまで言って、私は喋りすぎたと焦った。
すると碧斗くんが眉を上げてこちらを見る。
「とにかく橙子が無事でよかった」
「うん……」
その後、思うことがあって少しの間目を伏せていたことに、碧斗くんは違和感を感じ取ったようだ。
「橙子、何考えてる?」
「うん、えっと、じつは弓道の大会が近いの……」
碧斗くんが助けてくれたから何もなかったとはいえ、今回の事件のことを受け止めるにはまだ時間が必要で、心に与える影響を私は心配していた。
「そうだったな。俺に何かできることはあるか?」
「んーん、大丈夫だよ。大したことじゃないから碧斗くんは気にしないで」
「そんなこと言うなよ」
碧斗くんは強い口調でそう言った。
「弓道は橙子にとって大事なことだろ。俺もちゃんと応援したい。でも邪魔になったりしてもしょうがないから、何かできることがあるならいっしょに考えたい」
「ありがと……碧斗くんなら、そう言ってくれる気がした」
「じゃあ、今日はそばにいてほしいかな」
「それだけでいいのか?」
「うん、ホントはね。ずっと隣に……あ、隣の席って意味じゃないよ?」
「わかるよ」
二人で微笑みあう。
ずっと。
ずっとは、ずっとってことなんだけど、碧斗くんにはどれくらい伝わったかな。
これ以上は恥ずかしくて、今は言えないや。